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2019.12.02

[特集 国際ロボット展vol.4]「できない」から「できる」領域にも、人手不足や連続操業したい中小に/三菱電機

中型や小型の産業用ロボットメーカーとして、1980年代からロボットを外販してきた三菱電機。今回の「2019国際ロボット展(iREX2019)」では、前回展で参考出展した人協働ロボットをさらに熟成させた、新タイプを出展する。新設された南館にスマートファクトリーを再現し、製造ラインでロボットをどう活用できるかのビジョンを示す考えだ。提携する米国の人工知能(AI)ベンチャーとの新産業用ロボットシステムも披露する。

スマートファクトリー再現

 12月に東京で開催される国際ロボット展で三菱電機は、南館に確保した70小間に、人とロボットが共存する最新のスマートファクトリーを再現する。従来の産業用ロボットと人協働ロボット、無人搬送車(AGV)や人工知能(AI)を導入した技術が適材適所で動く。同社が考える未来工場のビジョンを示す。

 製造ラインで各ロボットをどう配置し、具体的にどんな作業をさせるのか、AI技術をどう活用できるのかの実例を示す考えだ。

「大手企業はもちろん、導入に踏み切れなかった中小企業にも 導入を促したい」と語る武原純二ロボット製造部長

 同社名古屋製作所の武原純二ロボット製造部長は「人手不足への対応や、連続操業したいとのニーズは今後ますます増える。これまで積極的にロボットを導入してきた大手企業はもちろん、導入に踏み切れなかった中小企業にも導入を促したい」と語る。

 製造業でロボットを導入するといえば、自動化を進めて生産性向上を図り、自動計測で品質管理を厳格化するなどが想像される。初めからロボットに高度な作業をさせるのを前提にするのではなく、機械の前で待ち、加工前後の部品を投入し、それを取り出して検査に受け渡すなどの単純作業など、簡単な作業からロボットの導入を促し、便利さを訴える考えだ。

 これまで人海戦術で対応してきた中小企業の製造現場でも、ロボットを導入したいとのニーズがあるとみている。

人協働ロボをさらに進化

前回の17年展で参考出展した人協働ロボット(提供)

 今回展では、前回の17年展で参考出展した人協働ロボットをさらに進化させた、新タイプを出展する。前回展での反響を受け、プライベートショーでの実演展示や、実際に試作機を貸し出すなどして、利用者の声を受けて今も開発を続けており、より量産モデルに近い人協働ロボットを披露する。

 「開発中の協働専用ロボットは、ロボット本体に人が触るのが前提で、アームの可動部などに指や腕が挟まれないようにしており、人が直接アームを動かしてティーチングできるようにしています。17年展で参考出展した物と比べ、より導入しやすくしました。プログラムの操作画面ではイラストを導入してよりビジュアル方式にして、アルファベットではなくスマートフォンを操作する感覚に近づけたビジュアルプログラミングとシミュレーターを用意しました。知覚的に、シンプルな動作を簡単に作れるツールです。さらに、アーム部分にLEDライトを搭載し、電源が入った状態なのか、自動運転中なのかなど、ロボットの状態が外からひと目で分かるようにして、利用者により安心して使ってもらえるようにしました。デザインも見直すと共に、高さや幅を、よりコンパクトにしています」(武原部長)

米AIベンチャーとの新システムも披露

 人協働ロボットの導入のしやすさは、これだけではない。安全柵がいらないため、従来の産業用ロボットの導入に比べて省スペースで導入できる点も重要だ。これからロボットを導入しようと考える企業の製造現場では、ロボットの導入を前提にしておらず、安全柵を設置するスペースも考えられていない。人協働ロボットなら、スペース不足も解消される。

今年のEMOショーやメカトロテックジャパンでは工作機械のNCで制御できる ロボットを展示した(写真はEMO、撮影・西塚将喜)

 「人とロボットが共存する作業現場は、これからも増える。これまでロボットが投入されてきた、溶接や塗装などの現場、半導体製造などでの高速作業など、人ではできない領域から、人でもできる領域への導入が進む。われわれロボットメーカーはこうしたニーズや作業領域に協働ロボットの導入で応え、需要を掘り起こしていきたい」(武原部長)  

 三菱電機は今年5月、米国のAIベンチャー企業リアルタイム・ロボティックスへの出資を発表した。2020年までに同社の技術を使った新たな産業用ロボットシステムの開発を進めている。今回の国際ロボット展でも協働作業のデモを披露し、人と接触してロボットが止まるのはもちろん、人の手をよけて作業を続けるようすも披露する考えだ。

(ロボットダイジェスト編集部 長谷川 仁)


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