[ロボットが活躍する現場vol.62]停止を恐れず自動化を磨く/和歌山アイコム
止まらないラインは「最悪」
同社は「アイコム・プロダクション・システム(IPS)」と名付けた生産方式を取り入れている。工程にあえて負荷をかけ、そこで生じたひずみから問題点を抽出し、原因の究明や改善、効果の確認を繰り返すことを重要視する。「例えば設備停止が一切起きない生産ラインは、わが社にとって最悪だ。作業ペースが遅いなど工程に余裕を持たせすぎているため、止まらず稼働し続ける。止まらないラインよりも改善に挑戦した結果として止まるラインの方が価値がある」と田中社長は言う。
こうしたIPSの考え方にロボットによる自動化を組み合わせ、「NEXT(ネクスト) IPS」として発展させた。自動化した生産ラインでも、あえて厳しいタクトタイムを設定し、チョコ停(短時間の設備停止)の発生を覚悟の上で生産効率を追い求める。
組み立てラインには、チョコ停などラインの停止に迅速に対応するための仕組みも設けた。システム上部にカメラを設置し、トラブルが起きやすい箇所を常時撮影する。映像は設備付近だけでなく、別の階に設置したモニターでも確認できるため、トラブル発生時には現場へ向かう前に状況を把握できる。
逆風を受けながらも…
同社の自動化の始まりは約25年前に導入した無人搬送車(AGV)だった。複数の建屋間で部品を受け渡す作業を自動化するために導入した。また、工場内の異なる階にも搬送できるよう、エレベーターと連携して稼働するなど工夫を凝らした。当時導入したAGVは今も稼働を続けている。
AGVの導入から約15年後、製造業の人手不足を背景に自動化の必要性が一段と高まったと判断し、垂直多関節ロボットなどを使った本格的な自動化に着手した。現在では自動化設備を積極的に導入しているが、当時は社内で猛反対に遭ったという。
「自動化設備の導入コストは決して安くない。投資に見合う成果を出せるかを上層部に厳しく問われた。また、AGVは磁気テープを貼るだけで走行ルートを決められるため、比較的扱いやすかった。一方、作業者が複雑なロボットシステムを十分に扱えるのかという点にも、懐疑的な目が向けられた」と振り返る。
16年に導入した6軸垂直多関節ロボットによる完成品の検査工程の自動化を皮切りにさまざまな自動化システムを導入し、その集大成として組み立てラインそのものの自動化へつなげた。
「大掛かりな自動化は一通り終わった」と田中社長は話すが、工場の自動化が完了したわけではない。ライン全体でなく個別の工程を対象に自動化システムの導入を続ける。直近では無線機の部品に接着剤を塗布するシステムや、無線機の完成品を収めたコンテナをパレタイズ(積み付け)するシステムの導入を予定しており、作業のさらなる省人化を図る。
