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2024.07.11
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[ショールーム探訪vol.24]研磨材メーカーの100年の知見を生かす/スリーエムジャパン「3Mロボット研磨ラボ」

研磨工程に迫る危機

 1902年の創業後、耐水性の強い研磨ペーパーで大きく業績を伸ばしたスリーエム。研磨材メーカーとして100年以上の歴史を持つが、研磨工程のロボット化にも早くから取り組んできた。米国では40年以上前にロボット研磨ラボを立ち上げており、アジア向けの拠点として日本にもロボット研磨ラボを設立した。「研磨工程に関するノウハウを持つロボットメーカーやSIerはまれ。そこにわが社の強みがある」と奥田事業部長。  国内外で研磨の自動化に取り組む同社は、現在の生産現場の研磨工程を「危機的な状況」と表現する。人手不足は製造業全体の課題だが、研磨工程はその作業の過酷さから、人を集めるのがより難しい。加えて作業自体も難しく、習熟には時間を要する。「熟練作業者の高齢化や後継者不足に悩む現場も多い」と奥田事業部長。そこで同施設を活用し、研磨工程のロボット化を通じて現場の課題解決を図る。  記者も手作業の研磨を体験したが、グラインダーと溶接ビードが触れる際の反動が大きく、ただ真っすぐ動かすのもままならない。短い作業でも汗だくになるほどで、研磨工程の大変さを痛感した。

手作業の研磨を記者も体験した。グラインダーを当てた時の反動が大きく、思うように動かせなかった
左から2つ目の溶接ビードをロボットで、その右を記者が研磨した。仕上がり具合の差は一目瞭然

SIerと連携強化を

さまざまな研磨材を取りそろえ、生産性向上に貢献する

 今後さらに研磨工程のロボット化を広げるには、SIerとの連携が不可欠という。奥田事業部長は「わが社はあくまで研磨材メーカーで、実際のロボットシステムを構築するのはSIer。現場に最適なロボット研磨を実現できるよう、SIerとより関係を深め3Mロボット研磨ラボで研究開発を進めたい」と話す。  近年は大手だけでなく中小のユーザーも増えており、相談内容も多様化している。「研磨工程を全てロボット化するのではなく、9割を自動化して最終仕上げは人手で良いとの依頼もあり、ユーザーのさまざまな自動化ニーズに応えていくのが当面の課題」と言う。また協働ロボットを使いたいとの相談が2年ほど前から増加しており、産業用ロボットに加えて協働ロボットに対する知見も深めている。

(ロボットダイジェスト編集部 水野敦志)

[取材記者から] 3Mロボット研磨ラボで初めて手作業の研磨を体験したが、その難しさは想像以上だった。ところがロボットのデモ機ならスムーズに研磨が完了し、その様子に爽快感さえ覚えた。同社は研磨工程を「危機的な状況」と表現するが、この施設に来た相談者はきっと晴れやかな顔で帰ったのではと思う。 施設概要 名称:3Mロボット研磨ラボ 所在地:神奈川県相模原市中央区南橋本3-8-8 問い合わせ先:ウェブサイトの相談フォームから 関連記事:[ショールーム探訪vol.23]専門メーカーならではの提案の場に/パナソニック コネクト「プロセスエンジニアリングセンター」 関連記事:[ショールーム探訪 vol.22]“共創”拠点を設けたデベロッパーの決意に触れた/野村不動産「TechrumHub」 関連記事:[ショールーム探訪vol.21]パッケージの強みを体感/レステックス「未来のひろば」

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