[ショールーム探訪vol.14]協働ロボットを体験してもらう場/IDECファクトリーソリューションズ
タブレット端末で操作
ショールームの展示品にはそれぞれ役割があり、さまざまなデモを通じて「協働ロボットとは?」「協働ロボットで何ができるの?」といった初歩的な疑問に応えてくれる。 例えば入り口付近では、JAKAロボティクスの協働ロボットが搭載された自社開発の手押し台車と、URの協働ロボットが搭載されたMiRのAMRの計2台のロボットシステムが積み木や電子機器を所定の場所に供給する様子が見られるが、これは工作機械に被加工物を供給する「マシンテンディング」をイメージしたデモだという。 酒井さんから「触ってみますか?」と勧められ、記者もJAKAロボティクスの協働ロボットを操作した。「これを使ってください」と渡されたのは、何とタブレット端末。ロボットのティーチング(動作を覚えさせること)には通常、ティーチングペンダントと呼ばれる制御機器を使用する。これに対し、JAKAロボティクスはタブレット端末でティーチングをするため、非常に直感的に扱えるのが特徴だ。 感覚的にはUFOキャッチャーを操作するイメージに近く、「ロボット=難しい」という先入観が見事に覆された。「タブレット端末だけでティーチングができるなら、文系出身の自分でもできそう」と本気で思ってしまったぐらいだ。
また、JAKAロボティクスの協働ロボットと安川電機の協働ロボット、MiRのAMRを使用した段ボール箱のパレタイジング(積み付け)やデパレタイジング(積み下ろし)の自動化デモも見どころの一つだ。 最大可搬質量が1tもあるAMR「MiR1000」で段ボールが搭載されたパレット(荷役台)を運び、まずはJAKAロボティクスの協働ロボットがパレットから段ボールをデパレタイジングしてベルトコンベヤーに載せる。そして、ベルトコンベヤーで運ばれた段ボール箱を安川電機の協働ロボットがパレタイジングするという一連の流れを実演している。 AMRには360度を見渡せるレーザースキャナーが搭載されており、障害物を回避しながら目的地まで走行できる。そのため、仮に取材に夢中になった記者が無意識のうちにAMRの走行ルートをふさいでも、AMRが周囲の状況を自律的に判断して最適な迂回ルートを選択する。
かなり突っ込んだ声も
IDECファクトリーソリューションズがSIerの事業に参入したのは2016年。「業界の中では後発組に当たる。差別化を狙うため、当時徐々に認知度が広がりつつあった協働ロボットに特化した」と武仲社長は説明する。 翌17年には、「協働ロボットを知ってもらう場」とのコンセプトで協調安全ロボットテクニカルセンターを愛知県一宮市に開所。年を重ねるごとに展示品のラインアップを拡充し、昨年4月に現在の場所に移転拡張した。開所から19年までは年間で200~250社がセンターを訪問していたが、20年からは新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、一時的に来訪社数が減少。だが、最近は大企業や中堅企業を中心に、再び増加傾向にあるという。 鈴木取締役は「当初は単に『協働ロボットを見たい』との要望が強かったが、協働ロボットの認知度が広まるにつれ、来訪者のニーズも『この作業を自動化できないか?』といった具体的な形に変わってきた。最近は『協働ロボットを有効に使うにはどうしたらいいか?』『この工程を自動化するなら通常の産業用ロボットと協働ロボットのどちらを使えばいいか?』など、かなり突っ込んだ声も聞かれるようになった」とニーズの変化を分析する。
ショールームの隣には、企画した協働ロボットシステムの実現可能性を検証するエリアもあり、今後はこうした「概念検証(PoC)」の有償サービスにも注力していく。 それと同時に、顧客の工場にシステムを持ち込んで実際の環境で検証する体制も強化し、システムの受注につなげたい考えだ。 武仲社長は「協調安全ロボットテクニカルセンターで協働ロボットを体感していただくと共に、お客さまが抱える課題の詳細化も積極的に支援したい。また、現地での実機検証などを通じてお客さまの組織を巻き込みながらシステム検討をすることも、概念検証の一つの方法として大切だと考えている。そのためにはいかにフットワーク軽く、お客さまの工場に訪問できるかが重要」と力を込める。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)
[取材記者から] 協働ロボットに特化したSIerのショールームだけあって幅広いメーカーの協働ロボットが展示されており、ロボット好きの人にはたまらないだろう。記者はロボットを直接導入する立場にはないが、それでも純粋に楽しめた。協働ロボットのポテンシャルは大きいが、動作スピードや最大可搬重量の低さなどの課題も指摘される。協調安全ロボットテクニカルセンターに行けば、こうした一長一短も含めて協働ロボットを正しく理解できるはずだ。 施設概要 名称:協調安全ロボットテクニカルセンター 所在地:愛知県一宮市東島2-8 予約申し込み:「協働ロボット.com」の専用ページから 関連記事:[ショールーム探訪vol.13]実見し、触れて、楽しめる場所/テックシェア「開発センター」 関連記事:[ショールーム探訪vol.12]モノ売りからコト売りへ/因幡電機産業「ロボットセンターOSAKA」 関連記事:[ショールーム探訪vol.11]上野の繁華街で、協働ロボを教わる/「SSI株式会社×TM-ROBOTショールーム&ラボ」