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2019.07.03

[特集FOOMA JAPAN]自動車用技術を生かし食品をつかむ/デンソーウェーブ

スカラとコボッタのコラボ

 衛生環境への取り組みはロボットジャケットだけではない。例えば高速スカラロボット「HSRシリーズ」の「金検ジャバラ仕様」がある。
 スカラロボットは、アーム先端の軸を上下にスライドさせることで物をつかみ持ち上げる。そのため上下軸駆動部のグリスが飛散することも。食品を扱う工場では、異物混入は避けたいところ。そこで異物が落ちないよう上下軸にジャバラのカバーを取り付ける。さらには、ジャバラの素材に金属を混ぜることで、たとえジャバラの欠片が製品に混ざったとしても後工程の金属探知で分かるようにした。異物の混入した食材を確実に取り除ける仕組みを作ることで、食への安全を確保する。

今回展ではスカラロボット「HSRシリーズ」と協働ロボット「コボッタ」を組み合わせる

 金検ジャバラ仕様を採用したHSRシリーズは、今回展の会場で見ることができる。さらに協働ロボットのコボッタとの組み合わせを紹介する。
 前回展ではスカラロボットのみでの自動化提案だったが、持ち運びができ、使い方の自由度が高いコボッタとコラボさせ、袋麺(めん)包装の前工程を披露。高速性と実用性をさらに体感できる展示にするという。「コボッタを使うのは人協働型だからとの理由だけではなく、作業内容の変更に即座に対応できるから。臨機応変に自動化を実現できる強みをアピールする」(神谷事業部長)。
 またこのピッキングには人工知能(AI)を使った「AIビジョンピッキング」を採用する。これまでは難しかった不定形物や、さらには透明なパッケージや反射している物体の認識もできるという。

2台をまとめて高速ピッキング

2つの腕を1台のコントローラーで動かす

 人手不足への対応やスペースが限られる工場での生産効率の向上は、自動車産業にも食品産業にも共通する課題だ。
 スカラロボットを使った作業の自動化で人手不足の解消を提案するデンソーウェーブは、2台のロボットを1台のコントローラで統合制御する「デュアルアーム制御」を同社小間に展示。狭いエリアでも衝突を回避でき、協調制御機能を組み合わせて重量物や長尺物の搬送もできる。2台を1度に制御することにより簡単な調整で高い生産性を実現でき、さらにコントローラー1台分を必要としない省スペースと低コストをアピールする。
 前回展ではデュアルアーム制御によるチョコレートの高速箱詰めとふた閉めを披露しており、今回展ではデュアルアームでコンベア上の食品の高速ピッキングを実演する。

峠を越えた先の市場

「食品産業へのロボットの市場はこれから」と神谷孝二FA・ロボット事業部長

 デンソーウェーブの食品産業向けの売り上げは、まだ全体の数%ほど。ただし本格的に取り組み始めた3年前と比べて、引き合いは増加傾向にあるという。人件費の上昇や人手不足への対応策としてだけでなく、衛生管理のしやすさや異物混入時に原因を突き止めるトレーサビリティへの対応のしやすさなどが注目され始めた。
 まだロボットによる食品製造工程の自動化は普及途上にある。来場者のロボットに対する理解を深め、工場が抱える課題の解決策を思い描けるようにするため、デンソーウェーブはFOOMA JAPANで具体的な提案、実演をいくつも用意する。
 「まだ解決すべき課題や実現すべき要望があり、ロボットを使うことに対してなじみも薄い。だがその峠(課題や要望など)を越えた先には大きな市場が広がっている」と神谷事業部長は食品産業への期待を語る。

(ロボットダイジェスト編集部 渡部隆寛)



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