[SIerを訪ねてvol.4]地元企業のロボット普及の起点に【前編】/HCI
装置メーカーとしての技術生かす
同社はケーブルやワイヤの製造装置メーカーとして、2002年に大阪府和泉市で創業。ケーブルやワイヤの元になる細い金属線は柔らかく細長いため、機械で取り扱うのが難しい。 例えば、撚線機(よりせんき)は金属線を高速で回転させて撚(よ)るのだが、回転が速いほど軸受けから振動が起き金属線が切れてしまう。そこで、世界で初めて非接触の磁気軸受を採用した「STF-eCシリーズ」を開発し、独自の機構は特許も取得した。 「2017国際ロボット展」で展示した「多芯ワイヤーハーネス自動製造システム」は、多軸ロボット2台とレーザー、ビジョンセンサーなどを組み合わせて開発した。複数のケーブル(芯)を持つワイヤーハーネスの一端をハンドリングし、さばいて被膜をはがし、金属端子を圧着するまでを自動化する。ロボットによる自動化と、従来のハンドリング技術を融合した。 今は一部の機構について特許申請中だ。 これら装置メーカーとしての技術開発を通じて、柔らかいもの、細長いものを取り扱うノウハウを積み重ね、SIer事業に生かしている。同社の直近の年間売上高は約6億円で、そのうち3割程度をSIer事業が占める。「重要な事業に育ってきた。ケーブルやワイヤ製造装置に比べて単価は低いが、受注件数は同じくらいある」と奥山社長。
ロボット導入を通じて地元企業を応援
南大阪地域はタオルや毛布などの繊維産業が盛んで、中小規模の町工場が多いが、近年は働き手や後継者の不足が深刻。奥山社長は「廃業するか、ロボットを導入するなどして事業を継続するかの2択になりつつある」と危惧する。 同社は、ロボット導入を通じて事業継続を支援する場として、18年9月に泉大津市商工会議所内にHCIロボットセンターを開設した。商工会議所は駅前の好立地にあり、地元企業のオーナーが集まることが多く、会議室などの設備も充実している。地元企業の支援につながるとの思いから、商工会議所側も快く要望に応じた。 センターの開設は奥山社長の念願だったと言う。また近畿経済産業局の委託事業でもあり、「一企業として貢献できることは限られるので、いろいろな制度を活用してロボット普及に貢献したい」と奥山社長は力を込める。 夜間にはロボットをライトアップしており、「一般の人がロボットを目にする機会は少ないと思うので、広くロボットを見てもらいたい。時折、インスタグラムに写真が投稿されているようだ」と話す。
――後編へ続く (ロボットダイジェスト編集部)
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