[特集 ロボットテクノロジージャパンvol.3②]多様なニーズに向き合う/安川電機 小川昌寛 取締役専務執行役員 ロボット事業部長
データを基に自律判断
――RTJ2022では、どのような展示をしますか。 製品やアプリケーションの単体展示ではなく、変種変量に対応するコンセプトを披露します。「ここまでできる」という具体的なデモを見ていただき、それをお客さまの現場に合わせたら何ができるかを一緒に考えたい。メイン展示の核は、デジタルツインの活用と自律分散制御です。 ――2022国際ロボット展(iREX2022)でも注目を集めました。 ロボットなどの製造設備が、データに基づき自律的に判断して生産するシステムで、多くの来場者に興味を持っていただきました。私は、メカトロ製品にデータ活用を融合させたソリューションコンセプト「i3-Mechatronics(アイキューブ・メカトロニクス)」の現実版だと思っています。
中部は国内製造業のフラッグシップ
――デジタルツインなど仮想空間を活用する手法が増えました。 仮想を扱う技術が進歩するほど、リアルの物の重要性が高まります。仮想だけが先行することはあり得ず、仮想とリアルの両方があってこそ「ツイン」です。データに基づいて仮想空間で動かすわけですが、リアルから得たデータでなければ、ただのシミュレーションです。そして、そのデータがエビデンス(根拠)となって改善やロスの低減を導きます。 ――詳しく教えて下さい。 例えばレストランだったら、レシピ通りの調理や配膳は計画できますが、食後の片付けでは、皿の状態を認識して、整列や廃棄といったタスクを一つ一つプランニングしなければなりません。その過程で得たデータから食べ残しの種類や量を分析できるため、フードロスの改善につなげられます。つまり、自動化技術は、過去のデータに基づいた自律行動に向かうほど、いろいろなロスの低減につながるわけです。その結果、持続可能な開発目標SDGs(持続可能な開発目標)の多くの項目の実現に近付く。カーボンニュートラル(炭素中立)やESG(企業の長期成長に必要な環境、社会、ガバナンスの観点)の達成にも貢献します。100点満点ではないかもしれませんが、継続的で実効性のある環境対策につながります。そして、ロスを低減できた分だけ増産することで、より多くの利益を生み出せます。 ――その提案をどのような人に見てもらいたいですか。 これから本当に向き合わなければならないのは、多様なニーズを持ちながらもわれわれが今まで明確に応えられなかった、圧倒的多数の中小企業です。その意味で、「いろいろな」人に見てもらいたい。中部地方は自動車産業を中心にサプライチェーンが高度に集積する地域で、いわば国内製造業のフラッグシップです。そこでリアルに開催されるRTJ2022は、自動化がもたらす価値を共有し、世界に示す場として非常に重要です。
(聞き手・八角 秀、写真・松川裕希)
おがわ・まさひろ 1987年九州芸術工科大学(現九州大学)工学部卒、安川電機製作所(現安川電機)入社。2004年ロボティクスオートメーション事業企画部長、06年ロボット事業部ロボット工場開発部長、07年新規ロボット事業推進部長、09年新規ロボット事業統括部長、10年ロボット技術部長。10年米国安川米州統括。12年執行役員、16年ロボット事業部長、19年取締役、20年常務、22年代表取締役専務。1964年生まれの58歳。
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