ヒューマノイドロボットの自律作業の現在地と可能性示す/山善
産業用機器を扱う大手専門商社の山善は10月30日、千葉県市川市の物流センターで、ヒューマノイドロボットの試験導入の様子を公開した。ヒューマノイドロボットが箱型コンテナに入ったぬいぐるみをばら積みピッキングし、別のコンテナに移し替える。作業するタクトタイムは向上の余地があるなどの課題もあるが、初めて経験する対象物でも高い成功率で自律的にピッキングに対応しており、可能性の大きさを示した。
自律的に判断して作業する
山善は東京納品代行(千葉県市川市、大草久社長)、制御系のシステム基盤などを手掛けるINSOL-HIGH(インソルハイ、東京都千代田区、磯部宗克社長)とヒューマノイドロボットの試験導入を進めている。年内いっぱい、物流現場での活用の可能性を探る。
今回の発表会では、ヒューマノイドロボットが箱型コンテナに入ったぬいぐるみをばら積みピッキングし、別のコンテナに移し替える作業を実演した。
頭部や両手首にあるカメラで対象物を認識し、次にすべき動作を判断。動作経路の生成や軌道の最適化などのモーションプランニング(動作計画)をし、実行するまでの一連をヒューマノイドロボットが自律的に実行する。
導入から1週間ほど経過した同日時点で、5回までのリトライを「成功」とした際の一連の動作の成功率は97%で、10個を移し替えるまでの平均のタクトタイムは131秒となった。
発表会のデモでは、当日用意されたぬいぐるみを器用に移し替えていた。それだけでなく、急きょ投入されたプレス腕章の移し替えにも対応したり、把持する対象物をわざと移動させても追従するなど、対応能力の高さを見せていた。
高い対応能力の理由
今回は中国のAGIBOT(アギボット)製のヒューマノイドロボット「G1(AMR)」を使用した。AGIBOTが豊富な動作学習データを持っており、そのデータと本体をセットで導入できる点が決め手になった。
そのデータを基に、INSOL-HIGHが今回の一連の作業に必要な一つ一つのタスクを学習させた。
例えば、「右手で対象物をつかむ」という動作を人がコントローラーなどを操作することでロボットに実行させ、その時にカメラで撮影した視覚情報とひも付けすることで、把持に成功したか失敗したかを判断できるようになる。
そういった動作や視覚情報の学習とひも付けなどの調整を進め、今回の作業の基盤モデルを構築した。
さらに、基盤モデルを構築する実証現場と導入する作業現場のロボットの周辺環境は当然異なる。そのままでは、構築した基盤モデルの内容を適用できない。そこで、キャリブレーションなどのファインチューニング(調整)を施した。その結果、高い対応能力を発揮した。

