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2025.07.18
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[注目製品PickUp! vol.86]3Dモデルを最適化し、データ編集の手間を減らす/スペイシャル「Data Prep」

3DCAD(設計支援)ソフトウエアなどに向けた開発キット(ソフトウエア・デペロップメント・キット=SDK)を開発する米国のスペイシャルは近年、産業用ロボット向けの製品開発に力を入れる。昨年には、ロボットのティーチングソフトなどの開発に使うSDK「3D InterOp(インターロップ)」のアドオン製品として、3Dモデルの不要な部分を自動削除する「Data Prep(データプレップ)」を発売した。ロボットアームの3Dモデルデータを単純化する作業の効率化を実現する。

自動で取り除く

 ソフト上でロボットのオフラインティーチング(教示)や干渉チェックをするには、稼働するロボットの3Dモデルが必要になる。3Dモデルには外装の表面に開けた穴や、角を丸くした「フィレット」など、構造に関する多くの情報が含まれる。そのままソフトに取り込みシミュレーションなどをするとデータ容量が大きく、処理に負荷がかかる。


 「それを防ぐには穴やフィレットなど、シミュレーションをする上で不要な部分のデータを取り除く必要があるが、現状は一つずつ確認して手作業で削除しなければならない。結果としてシミュレーション自体の所要時間は短縮できても、その準備に時間がかかってしまう」と日本営業所の佐藤恭祐ディレクターは説明する。

「Dara Prep」で3Dモデルデータを単純化できる

 そこでスペイシャルは、3Dモデルから不要な部分を自動で削除する機能を持つ「Data Prep」を開発した。Data Prepは、ロボットのティーチングソフトなどの開発に使うSDK「3D InterOp」の機能を拡張するアドオン製品。3D InterOpで開発したソフトにロボットの3Dモデルを取り込む際、不要な部分を自動削除する機能を実装できる。


 「シミュレーションに影響しない範囲で、ロボットアームの形状を単純化する。従来、3Dモデルはソフトに取り込んでから編集するとの考え方が一般的で、取り込み時に単純化するデータプレップは全く新しい発想の製品」と石橋高広コンサルタントディレクターは語る。

内部部品も判定

 今年5月にはData Prepの新機能として「HBR」を追加した。HBRは「Hidden Body Removal (ヒドゥン・ボディー・リムーバル)」の略で、ボディーの内部に隠れたデータを除去することを意味する。ギアや軸受けなどロボットアーム内部の部品も、シミュレーションをする上では不要なデータとなる。HBR機能を活用すれば、3Dモデルの取り込み時に自動でロボットアームの外装を検出し、その内側の部品データを自動削除できる。


 データを自動で削除するとなると、必要な部分まで消えてしまうのではないかとの懸念も出るだろう。HBR機能はその点も抜かりなく、不要な部分の判定までをして、データの削除は作業者が判断するモードも備える。


 「ロボットアーム単体なら良いが、ロボットセルの3Dモデルでは、ロボットアームを囲う保護パネルを外装と判定し、その内側を全て削除してしまう可能性もある。その場合は自動で判定までして、削除する範囲を作業者が確認することになるが、それでも従来の作業と比べ効率的」と佐藤ディレクターは言う。このモードを使うことで、周辺機器などを組み合わせたロボットセルの3Dデータも処理できる。

新機能「HBR」で内部部品を自動で削除できる
3Dモデルの取り込み時に、内部部品を検出する
検出した内部部品を削除し、データを単純化
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