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2025.12.13
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[特別企画 密着!高校生ロボットSIリーグvol.7]供給装置の方向性決まる/愛知総合工科高校

「第4回高校生ロボットシステムインテグレーション競技会(高校生ロボットSIリーグ)」が今年12月13日と14日の2日間、愛知県常滑市の展示会場「Aichi Sky Expo(アイチ・スカイ・エキスポ、愛知県国際展示場)」で開かれる。ロボットダイジェストでは「特別企画」として、前回大会のチャンピオン校(最優秀賞受賞校)である愛知総合工科高校が今年の第4回大会に挑む様子に密着する。現在進行中の取り組みを追いかけるため、結末は記者にも分からない。今回は、10月と11月の2回分の顔合わせの様子をまとめてお届けする。ロボットシステムの肝となる供給装置の方向性は決まったが…。

【前回までのあらすじ】
高校生ロボットSIリーグの連覇を狙う愛知総合工科高校のチームメンバーに3度目の密着取材を実施した。記者が訪問した日は途中でラジオ番組の収録があり、普段とは多少違った雰囲気で課題研究が進行した。

<前回記事はこちらから>

2つの設計案

10月中旬の課題研究ではまず、進捗や検討事項を関係者全員で共有

 12月13日の大会本番まで残り2カ月を切った10月中旬の水曜日。
 この日の課題研究もサポーターのシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のTECHNO REACH(テクノリーチ、愛知県長久手市、加藤正己社長)や石川工機(名古屋市天白区、石川利行社長)の関係者との顔合わせが予定されていたため、記者も愛知総合工科高校に向かった。

 前回の課題研究に密着した際は加藤健真さんが就職活動のため欠席だったが、今回は6人がそろっていた。大会本番までの時間も限られるため、まずはペットボトルや金属ボトルの供給装置などの各種機構の現状の進捗(ちょく)や検討事項を関係者全員で共有することから始めた。

コイル型スプリングで

第1案で発表した供給装置の試作品

 白井覚基さんが供給装置の設計案を2つ発表した。1つ目は以前から検討していた案で、ペットボトルも金属ボトルも上部から落とし、近接センサーで金属ボトルのみを検知して分別しつつ、残ったペットボトルをロボットで搬送する仕組みだ。

 だが、この案には課題があった。実際に段ボール箱で供給装置を試作したところ、想定以上に占有スペースが大きくなったという。今回の競技課題で使用するロボットシステムは横幅と奥行きが1m程度しかない。そのため、使いやすさや供給効率を考慮しつつ、限られた空間の中に供給装置や分別用のボックスなどをうまく収納できなければならない。

第2案で発表したコイル型スプリング

 そこで、彼らは2つ目の案として、コイル型スプリングで商品を供給する自動販売機のようなイメージでペットボトルや金属ボトルを搬送する機構も検討した。

 しかし、これにもいくつかの課題がある。競技で使うペットボトルと金属ボトルは複数種類あり、それぞれ微妙に形状が異なる。それらを一定のピッチで正確に搬送できるかが供給効率を大きく左右する。また、金属ボトルを分離するためにどこに近接センサーを設けるかも重要だ。

 2案に対するサポーターの“プロ”の意見なども踏まえつつ、最終的にはコイル型スプリングを用いた供給装置を軸に設計を進めることが決まった。

ここが踏ん張りどころ

ふたを開ける機構についてサポーターの関係者に説明する谷口斗絆さん(=写真左)

 白井さんに続き、今度はキャプテンの谷口斗絆さんがペットボトルのふたを開ける機構について関係者全員に共有した。

 2本のペットボトルのふたを同時に回す想定で、複数台のモーターやラック&ピニオン機構(歯車を使用して回転運動を直線運動に変換する機構)を駆使した装置を構想しているそうだ。だが、この案だと制御対象が多くなるため、実現するには入念な検証が必要になる。

 「メカ設計をしっかりと固めないと、その後に続く電気設計も制御の方向性も決まらない」(石川工機の石川社長)ため、ここが彼らの踏ん張りどころなのだろう。

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