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2025.09.19
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[ロボットが活躍する現場vol.51]協働ロボットで作業環境を改善し、省人化も実現/センテック

センテック(名古屋市南区、蟹江仙英社長)は自動車部品の洗浄工程に中国の珞石機器人(ROKAE<ロッケー>)の協働ロボットを初めて導入し、今年6月から本格的に稼働させた。従来は人手で担っていた洗浄機への供給作業を自動化し、過酷な作業環境の改善につなげた他、パート従業員1人分の省人化も実現した。

初のロボット導入

20人弱の従業員が現場で勤務する

 センテックは自動車部品の組み付けや検査をはじめ、ハーネスやケーブルへの圧着やはんだ付けなどの加工や、電気機器の組み立てや検査を担う。いずれの事業も手作業がメインで、全社員の約9割を占める20人弱の従業員が現場で勤務する。

 こうした労働集約型の事業を展開する同社にとり、人手不足や採用難は重要な経営課題だ。蟹江社長は「現状の仕事量に対して人員が充足しておらず、一人一人の従業員への負担が大きくなっている。採用活動にも注力しているが、なかなか思うように人が集まらない」と吐露する。

自動車部品の洗浄工程に導入したROKAEの協働ロボット「CR7」

 同社は深刻な人手不足に対応するため、さまざまな現場作業の自動化や機械化を検討している。

 その一環で自動車部品の洗浄工程にこのほど導入したのが、中国のROKAEの7kg可搬の協働ロボット「CR7」だ。ROKAEの販売代理店を務めるシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のIDECファクトリーソリューションズ(愛知県一宮市、藤木勝敏社長)が、自動化システムの設計から据え付け、調整まで含めて全て対応した。

3人から2人に

洗浄工程で稼働する自動化システム

 洗浄工程で稼働する自動化システムは、CR7やローラーコンベヤー、冷却用のエア供給ユニットで構成される。CR7は自動車部品が入ったケースを洗浄機に供給する作業や、洗浄後のケースを排出してエア供給ユニットのエリアまで搬送する作業を担う。
 従来はこれらの作業を人手でこなしていた。だが、自動車部品の洗浄には熱湯を使用するため、高熱の水蒸気が舞う過酷な環境でケースを取り出す必要があった。また、洗浄後の自動車部品は高温になるため、しばらくケースを放置して冷まさないと後工程の検査業務に着手できなかった。

 「今年6月には職場での熱中症対策が義務化されたことも相まって、過酷な作業環境を改善するためにも、まずは洗浄工程から自動化すべきだと考えた。複数の従業員が働く空間に自動化システムを導入する上で、安全柵があると従業員に威圧感を与える恐れがあったため、適切なリスクアセスメント(リスクの分析と対処)を施せば安全柵が要らない協働ロボットを選定した」と蟹江社長は振り返る。

ハンドを含むシステム一式をIDECファクトリーソリューションズが構築した

 CR7の自動化システムが本格的に稼働したのは今年6月。
 それまではフルタイムのパート従業員3人が自動車部品をケースに収納し、ケースを洗浄機に供給し、洗浄後のケースを回収し、自動車部品を冷ました後にエアブローをして目視検査するまでの一連の作業を担当していた。これに対し、CR7を導入して一部の工程を自動化したことで、3人から2人への省人化を実現。浮いた1人のパート従業員は現在、別の検査業務に従事している。

 センテックはこうした省人化効果によって人件費を抑制し、1年半~2年でペイ(投資回収)する狙いで自動化システムに投資したという。
 システム構築を担ったIDECファクトリーソリューションズの営業担当者は「洗浄機の扉を自動開閉式に改造するのではなく、CR7が人と同様に物理的に洗浄機の扉を開けてケースを供給する仕組みを採用するなど、コストを抑えるための工夫を凝らした。また、従業員が簡単にシステムを操作できるよう、分かりやすいインターフェースにもこだわった」と話す。

新たな課題も…

「最終的にはもう1人分の省人化を目指す」と語るセンテックの蟹江仙英社長

 現場に初めて導入した協働ロボットは過酷な作業環境の改善や省人化効果、自動化に対する従業員の意欲向上など、さまざまなメリットをセンテックにもたらしたが、同時に新たな課題も見つかった。

 蟹江社長は「従来はケースを冷ますのに一定の時間が必要だったため、従業員が作業しやすいタイミングで後工程の検査業務をやればよかった。しかし、CR7は一定のスピードで洗浄後のケースを排出するため後工程がひっ迫し、残された2人の従業員の負荷が増えつつあることが分かった」と述べる。

 そのため、両社はエアブローなどの後工程の改善に取り組んで自動化システムをさらに発展させ、最終的にはもう1人分、つまりパート従業員2人分の省人化を目指す構えだ。
 また、検査をはじめとした洗浄以外の各工程へのロボット導入も視野に入れるという。


(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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