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2020.01.28

連載

[注目製品PickUp!vol.21]高精度な一体型アクチュエーターユニット【前編】/ニコン「C3 eMotion」

ニコンは昨年12月に開かれた「2019国際ロボット展(iREX2019)」で新製品のインテリジェント・アクチュエーター・ユニット「C3 eMotion(シースリーエモーション)」を披露した。ロボットの関節ユニットとして新たな提案を打ち出す。核となるのは、位置を検出するセンサーであるエンコーダーの技術だ。ロボットの関節部は、モーターや減速機などをそれぞれ購入し、ノウハウを持つエンジニアが組み立てねばならなかった。これらを一体化して関節ユニットとして提供することで、ロボット設計のノウハウを持たないエンジニアでも簡単にロボットを作れ、設計の自由度も向上するという。

発想は昔から、しかし競合はほぼなし

 ニコンがiREX2019で披露した新製品「C3 eMotion」は、垂直多関節ロボットの関節部分などに使われるアクチュエーターだ。アクチュエーターとはエネルギーを運動に変換する動力機構のことで、ロボットの関節ユニットではモーターや減速機、エンコーダー、ドライバー、ブレーキで構成される。ニコンはエンコーダーのメーカーだが、その他の要素部品も組み合わせたユニットとして提供する。

 「ユニット化の発想は昔からあるが、ケーブルなどを内側に通せる中空型で製品化されたものはほぼない。また当社の一番の強みであるエンコーダーを2個搭載し、そこから得られるトルク(回転力の大きさ)の情報を出力できる商品となると、少なくとも国内に競合製品はない」と、エンコーダ事業室事業推進部マーケティング課の田口洋課長代理は説明する。
 極端にいえば、C3 eMotionのほかにアームやケーブルがあれば、顧客が独自に、世界で一つだけのロボットをつくれる。

 モーター出力が60Wの「IAU-60」と、200Wの「IAU-200」の2つをリリースした。「すでに試作品を大手顧客に使ってもらい、ブラッシュアップしている」(田口課長代理)。

オープンな「EtherCAT」を採用

インテリジェント・アクチュエーター・ユニット「C3 eMotion」のIAU-200

 一体型ユニットのC3 eMotionを採用する大きなメリットに、省配線化もある。モーターやブレーキなどを集めてロボットを組み立てる場合、それぞれに配線があるため煩雑になりがち。ユニット化したC3 eMotionを使えばこれを解消できる。さらに、C3 eMotionを複数組み込む場合は、C3 eMotion同士をケーブル1本で連結するだけで接続できるため、ロボット全体を大幅に省配線化できる。

 そのケーブルには通信規格「EtherCAT(イーサキャット)」を採用することで、上位コントローラーとの接続や通信の高速化を実現した。
 「イーサキャットは拡張性が高く、多くの企業が対応機器を展開するオープンな通信規格であることも利点」と田口課長代理は指摘する。

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