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2019.04.01

連載

[SIerを訪ねてvol.6]人材育成に力を入れる専業SIer【後編】/高丸工業

大型のワーク(搬送や加工の対象物のこと)のアーク溶接ロボットを中心に開発、製造してきた高丸工業(兵庫県西宮市、高丸正社長)は2007年、兵庫県尼崎市に「ロボットテクニカルセンター(RTC)」を開設し、中小企業のロボット導入を支援し始めた。17年にはRTCを東京にも設立し、今年2月にはフランチャイズ1号として岐阜市にも開設した。今後はRTCの拠点を拡充し、ロボットの導入支援をより一層力強く推進する。

ロボットと自動機械の違い

 高丸社長は、「ロボットが今後普及するには、ユーザーの認識を変えていく必要がある」と話す。高丸工業は自動機械メーカーとして出発した。70年代以前は自動車の製造ラインでは多くの自動溶接機が稼働しており、単一車種の部品を大量に溶接していた。単一車種なら一定の動作で同じ溶接をする自動機械で良かったが、今では複数の車種の混流ラインが当たり前になっており、従来の手法では車種の分だけ自動機械が必要になる。

 そこで、プログラムの切り替えで柔軟に対応できるロボットが自動車分野で普及した。「大量生産の代名詞ともいえる自動車産業でロボットが活躍したため、同じ動作を繰り返すものとの認識が広がったと考えられる」と高丸社長は話す。

 高丸社長は「自動機をたくさん作るよりもロボットを簡易的な自動機として使う方がコストを抑えられるのは事実。しかし、ロボットはもともと、人の仕事を代わりに仕事をするものとして開発された。人手不足が深刻な今、溶接などの専用機の代わりにロボットを使うだけでなく、人がしている多様な仕事を担うものとしても使うべき」と続ける。

RTCでロボット教育に注力

動作テストのため仮組みしたシステム

 高丸工業は07年、兵庫県尼崎市で最初のRTCを開設した。当初から国内7メーカーのロボットをそろえ、今では8メーカーのロボットが本社のRTC兵庫に25台、RTC東京に15台並ぶ。いろいろなロボットを使ってみて、それから決めてもらおうというスタンスだ。
 「イメージは家電量販店。各メーカーの営業マンに頼るのではなく、ユーザー自身が比較、検討できるのが一番と考えた」(高丸社長)という。

 中小企業でロボットを扱える人材を育てるため、07年から工業高校の生徒などを対象にロボットの操作研修などを実施。「彼らが就職してからロボットを扱える人材に育ってくれたら」と高丸社長は期待を寄せる。
 この取り組みは15年に、経済産業省が主催する「第6回ものづくり大賞」の青少年支援部門で特別賞を受賞した。

 また、ロボット導入企業の社員など、ロボットに動作を入力するティーチングや、検査をする担当者は、事前に所定の安全特別教育を受けることが労働安全衛生法で定められている。
 18年度にRTC各拠点でこの特別教育を受講したのは計887人。19年度は1000人を超える見込みだ。これはシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)としてはトップの実績で、2位以下を大きく引き離す。
 ロボットに関する教育では実機を使用する。また、SIerとしてロボットシステムを開発する際にも、シミュレーションだけでなく必ず実際のロボットでテストしており、現実にロボットを使うことを重視していることがうかがえる。

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