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2022.05.17

インタビュー

直交ロボット総合メーカーへ! 新規分野の開拓に注力/スター精機 塩谷陽一社長

「直交ロボット総合メーカー」へ――。射出成形機用の取り出しロボットで知られるスター精機(愛知県大口町、塩谷陽一社長)はこのスローガンの下、直交ロボットの製品群のラインアップ拡充に取り組む。中期経営計画では従来の取り出しロボットだけではなく、物流業界や工作機械業界などの新規分野の開拓に注力する方針を掲げた。昨年12月に就任した塩谷社長は「新規分野の売上高を3年後には全体の1割まで引き上げ、6年後にはその比率を3割まで高めたい」と意気込む。

3年後に1割、6年後には3割

低全高ロボットパレタイザー「PXシリーズ」(写真は2021年9月撮影)

――昨年12月にスター精機の社長に就任しました。
 わが社は射出成形機向けの取り出しロボットメーカーとして、自動車業界などを中心に製造現場の自動化を支援してきました。しかし、競合他社とのコスト競争が激化しており、製品単体ではなかなか差別化が図りにくい状況が続いています。そのため、長年にわたって蓄積した開発、設計、製造のノウハウを生かし、今後は射出成形以外の分野も開拓したいと考えています。今年度からスタートした中期経営計画では、新規分野の売上高を3年後に全体の1割まで引き上げる目標を掲げました。その次の中期経営計画の最終年度、つまり6年後にはそのウエートを3割まで高めたいです。

――どの分野を狙いますか?
 一つは物流業界です。取り出しロボットの開発で培った技術を応用した低全高ロボットパレタイザー「PXシリーズ」を20年11月に発売しました。全高が2000mmと低く、限られたスペースでも設置しやすいのが大きな特徴で、物流倉庫などでの段ボール箱の積み付けの自動化に力を発揮します。また、パレット(荷役台)から段ボール箱を積み下ろしするデパレタイジング用のロボットシステムの開発にも注力しています。早いうちに市場投入し、食品業界などに提案したいと考えています。この他、工作機械業界向けには被加工物の脱着を担うガントリーロボットを、ロボットのシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)向けには多関節ロボットの走行軸として機能する単軸ロボット「トラバーサー」を、それぞれ提供できないかと模索しています。いずれにしてもベースになるのは、取り出しロボットをはじめとした直交ロボットの技術やノウハウです。

カーボンを採用したハンド用パーツと従来品の比較展示(写真は19年6月撮影)

――会社のホームページを見ると「カーボン・ニュートラル(炭素中立)時代をリードする『直交ロボット総合メーカー』へ」と記載されています。
 わが社の今後の方向性を内外に示すため、このスローガンを掲げました。「スター精機=取り出しロボットメーカー」との考えを強く持つ従業員も多いだけに、こうしたスローガンを通じて社内の意識改革を図りたいです。取り出しロボットはあくまで直交ロボットの一つの事業であり、これからは物流業界や工作機械業界向けの新製品も開発して直交ロボットの製品群のラインアップを広げる考えです。

――二酸化炭素(CO2)排出量の削減にも注力する。
 持続可能な開発目標(SDGs)への貢献やCO2排出量の削減も重要な経営テーマに据えています。例えば、島根県出雲市にある主力生産拠点の出雲工場には1120枚の太陽光パネルを設置して自家発電に取り組むと共に、ペーパーレス化にも努めています。また、取り出しロボットの事業ではエアレスや電動化を実現する技術の開発に注力する他、ロボットハンド用の各種パーツを手掛けるアインツ事業部でも部材にカーボンを採用するなどして軽量化を推進しています。ロボットハンドを軽量化できれば、その分電力の消費量を削減でき、結果的にCO2排出量の軽減につながりますからね。

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