多様なプレーヤーを巻き込み、連携することが鍵になる/経済産業省 石曽根智昭 ロボット政策室長
「ウチでは使えない」の思い込みを打破
――ロボットの普及拡大に向けた取り組みはありますか? 中小企業の多くは、ロボットの話を見聞きすることはあっても「まさかうちでは使えないだろう」という思い込みがあると思います。そうした企業に、どうやってロボットに目を向けてもらうのか、これが大きな課題です。 ――その状況を、どうやって変えていく? 地道に「導入事例を提示していく」といった方法もありますが、どうしても国と地方の中小企業とでは間に距離があります。ロボット導入に関心がある人には届いても、「うちには関係ない」と思っている人までは届かない。そこで、ユーザーにより近い地方自治体の産業担当部門や地域の商工会議所、地方銀行や信用金庫などと連携する必要があるでしょう。 ――地域ぐるみでロボット導入を促進するわけですね。 「人手不足倒産」という言葉を聞く機会も増えました。中小企業の経営者は、思うように人手を確保できない中で、従業員を路頭に迷わせるわけにはいかないと思っている。地方金融機関も、顧客を存続させたい。中小企業は地域経済を支える存在ですから、地方自治体も地元企業には元気でいてほしい。全員の利害は一致しているわけです。
――ロボットの普及を図る上では、ロボットを扱える人材の育成も重要です。 人材育成は、ロボット産業の競争力を強化する上でも、ロボットの普及を図る上でも大切です。「未来ロボティクスエンジニア育成協議会」(略称=CHERSI<チェルシー>)などを通して力を入れています。工業高校は県立などの公立校が多いため、こちらも地域との連携が重要ですね。 ――他にはありますか? ロボット教育が教育課程に位置づけられることは重要と考えますが、教育の現場を考えると、中長期的に取り組むべき課題になると考えています。そこで、例えばサークル活動やクラブ活動で、興味のある学生や生徒がロボット教育を受けられる環境も整えられるのではないかと考えています。ロボットの基礎を学んでもらい、日頃の成果はロボットコンテスト(ロボコン)のような形で発表する。産業用ロボットを各校に入れられれば良いのですが、費用の面でも難しいため、教育現場に導入しやすい国産の教育用ロボットも必要ですね。 ――取り組むべきことがたくさんありますね。 ロボットは、経済安全保障の上でも重要な産業です。また、ロボットの普及拡大は日本の産業を強くすることとイコールだと思っています。来年度は「ロボットによる社会変革推進計画」の最終年度となります。さまざまな業界関係者と話し合いをしながら、その先の計画を練っています。そうした計画の中でいろいろと具体化していければと考えています。
(聞き手・ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)
石曽根智昭(いしぞね・ともあき) 2000年中央大学法学部卒、経済産業省関東経済産業局入局。14年製造産業局車両室課長補佐、17年いわき市産業振興部長、20年商務情報政策局産業保安グループ製品安全課課長補佐、23年7月から現職。神奈川県出身、1975年生まれの47歳。 関連記事:【スペシャルインタビュー】経済安保法は「攻め」 強い産業さらに伸ばす/経済産業省 産業機械課 安田 篤 課長 関連記事:ライブ配信&バーチャル展示でWRS開催/経済産業省 大星光弘ロボット政策室長 関連記事:人材・技術・環境、ロボ普及へ施策出そろう【その1】/経済産業省 石井孝裕ロボット政策室長