[SI基礎講座vol.5] 生産技術概論③
では、生産技術部門を持たない企業がロボット導入を円滑に進め、導入リスクを軽減するにはどうすればいいのか。
部門ではなく、生産技術の「機能」で考える必要があります。機能で考えるとはどういったことか。生産技術の生産準備機能で言えば、レイアウト設計やライン構築は製造部門、設備の導入やジグ・工具の準備は工務部門など、機能ごとにそれぞれ担ってもらうことになります。
生産技術部門がない企業でよく見られる問題としては、「工程順序設定を行わないまま製造現場に投げる」というモノがあります。工程順序をしっかり考えないと、無駄の多い作り方になりがちです。工程ごとの加工時間、標準作業時間が設定されていないケースも多いです。これでは作業者に対して目標管理が行えず、原価管理もどんぶり勘定になります。また作業手順書がないままだと品質にばらつきが出て、作業者教育にも時間がかかります。
生産技術部門がない場合は、機能ごとにどの部門の誰が何をするのかなどしっかりと決めておかなければなりません。
推進体制でカバーする
生産技術部門を持たない企業がロボット導入を円滑に進め、リスクを軽減するにはどうしたらいいか。生産技術の機能ごとにどの部門が何をするのか決めるとの話をしましたが、それだけではいけません。
私は「推進体制でカバーしてください」とアドバイスしています。責任を持って導入を推進する責任者とチームをちゃんと作りましょう。そのチームには、関係する全部門からメンバーを出してもらう方がよいです。そうしないと、「ウチの部門はよく知らない」との態度になってしまいます。
ITシステムの導入でも、システム部門だけで検討して導入してもあまり使われないことが多いですよね。「天から降ってきたシステムは誰も使わない」、これはよく言われることです。
一番大事なのは要件定義
生産技術部門がない場合、ロボットを導入するプロセスの中では何に気を付けるべきか。
一番大事なのは要件定義です。ここで8割ぐらいはロボット導入の成否が決まってしまいます。
要件定義までの間に、漏れがなく、必要な事項の検討が進んでいるかが非常に重要です。生産技術部門がない場合には、プロジェクトチームのようなものを作って、きちっと見極めていきましょう。。
最後に、私が知っているある中小企業の事例を紹介します。社長と製造部長との間だけで検討してロボットシステムを導入したものの、すぐに使われなくなってしまいました。現場の人が言うには、実際に使おうとしたら、細かい部分にさまざまな不備があり、使えなかったそうです。そんなことがないように、生産技術部門がないならプロジェクトチームを結成してリスクの洗い出しや必要な要件の検討などを行うようにしましょう。
――次回は「生産技術概論④」
(構成・ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)
※この記事は2023年9月12日~14日に日本ロボットシステムインテグレータ協会が主催した「ロボットSI基礎講座」を誌上講座として収録したものです。「ロボットSI基礎講座」の詳細情報の確認や申し込みは、同協会の公式ウェブサイト内「ロボットSI基礎講座」のページから。
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