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2020.05.27

連載

[SIerを訪ねてvol.15]けん玉だけじゃない! DXで未来を開く【前編】/マクシスエンジニアリング

ロボットがけん玉の技を

東海地方で放映された「けん玉ロボット」のテレビCM(提供)

 同社の名を一躍有名にしたのが「けん玉ロボット」だ。
 ロボットが、玉を大皿と中皿に交互に乗せ換える「もしかめ」や、玉の穴にけん先を入れる「とめけん」などの技を次々に成功させる様子は、多くの人の関心を集めた。浅野常務は「『けん玉ロボットを見た』と言われる機会も増えた」と話す。
 東海地方ではテレビCMも放映された。見たことがある読者もいるだろう。

 装置営業部の中川勝統氏は「技の大部分はモーションコントロール(ロボット動作を最適化すること)で実現した。人がけん玉の技をする時の手や腕の位置とその手順などをロボットの最適な動作に落とし込んで、0.1mm単位、0.1秒単位で一つ一つ教示した」と説明する。

 けん玉ロボットのようなユニークな取り組みに加え、画像処理技術を使ったロボットシステムを大学などの研究機関と連携しながら開発しているのも同社の特徴だ。
 3次元(D)カメラと2Dカメラを組み合わせ、ばらばらに積まれた部品をロボットがピッキングする「ピッキング・アイ」や、高速で高精度な3D計測を実現するビジョンセンサー「3Dロボットアイ」などを競合他社に先駆けて市場投入したという。

 もちろん、けん玉ロボットにも画像処理技術は実装されている。「技の成功率を高めるのに画像処理技術を使った」と中川氏は述べる。

「受け身体質」脱却へ

 ここまではマクシスエンジニアリングの概要やSIerとしての強み、けん玉ロボットのユニークな取り組みを紹介した。

 顧客ニーズへの対応力が強みだが、浅野常務は「受注案件に対して最適なソリューションを提供するのは当然で、ここおろそかにするつもりはない。しかし、それだけでは十分ではない。このままだと『言われたことしかできない』会社になる恐れになる」と、創造力が欠如することに対する危機感も抱く。
 後編では「受け身体質」の脱却を目指すための取り組みや、デジタル技術で事業革新を支援する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」時代を見据えた同社の将来像を解説する。

――後編へ続く
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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