[SIerを訪ねてvol.60]ベトナムを拠点に研磨やバリ取りの自動化を提案/フジ矢
作業工具メーカーのフジ矢(大阪府東大阪市、野崎恭伸社長)は2023年にFA事業部を立ち上げた。同事業部は自動化システムのインテグレーションや、ロボットの先端に取り付けるエンドエフェクターの製造、販売を担う。作業工具の製造で培った金属加工のノウハウを生かして研磨用のエンドエフェクターを多数開発、製造しており、自社製品を生かした自動化システムの構築を得意とする。金属加工の中でもニッチな市場といわれるロボットを使った研磨やバリ取り向けの提案に注力し、ベトナム拠点の強みを生かした戦略で事業の拡大を目指す。
ロボット研磨の強み
開発したエンドエフェクターの販売だけでなく、最適な使い方ができるよう加工条件の設定も含めた自動化システムの構築も担う。
ロボットを使った金属加工のメリットについて「例えば加工対象物(ワーク)の周囲を一度に加工する場合には5軸マシニングセンタ(MC)が必要になるがそのためだけに導入するのは非現実的。削りしろが少ないちょっとした加工ならロボットに任せても問題ない。ロボットであれば5軸MCの半分ほどの費用で導入できる」とFA事業本部の庄子就本部長。「ロボットはMCのような加工機と比べて剛性や精度は劣るものの、研磨材の高機能化が進んでおり、ベルトグラインダーの研磨は工作機械とそん色ない処理能力になりつつある。機械に収まらない大型ワークに対応できるのもロボットの強み」と語る。
研磨の自動化システム以外にも、エンドエフェクターに切削工具のエンドミルを取り付けた自動バリ取りシステムや、MCにワークをローディング、アンローディングする自動化システムをこれまでに構築してきた。
ニッチな市場で勝負
先述の通り、同社は作業工具メーカーとして創業し、中でも黒色と金色を基調とした工具のブランド「KUROKIN(クロキン)」は人気があり日本各地に根強いファンがいる。フジ矢の顔といえる作業工具事業に次ぐ新たな事業を立ち上げるために社内コンペを開いた。そこで庄子本部長が、これまで社内向けに開発してきた自動化設備の外販を提案し、採用されたことでFA事業部が誕生した。
「元々生産技術部に在籍しており、ロボットと工作機械を組み合わせた自社工場内の省人化を取り仕切っていたため、自動化に関するノウハウがあった。いずれは自動化設備をメインに据えた事業をやりたいとの思いがあった」と庄子本部長は振り返る。
日本では若い技術者が中小企業でなく大手企業を選ぶ傾向が強く、人材採用が難しかった。そのため、元々工具事業で拠点を持っており、優秀な若い技術者が豊富なベトナムに着目。FA事業に特化した現地法人としてフジ矢テックベトナムを23年に設立した。
ベトナムでは交流サイト(SNS)の「Facebook(フェイスブック)」で求人活動をする。募集要項を記載した記事を投稿すると、若く優秀な技術者から多数の応募が寄せられた反響の大きさにも背中を押され、工場自動化(ファクトリーオートメーション=FA)事業の拠点をベトナムに決めた。日本とベトナムをターゲットとしており、ベトナムの拠点では自動化システムの設計、製作を担う。
SIerとしては後発ということもあり、当面は対象とする業種を広げることなく金属加工の分野に特化して強みのアピールを徹底する。「金属加工の中でもロボットを使った研磨は非常にニッチな市場。ベルトグラインダー型のエンドエフェクターを作る日本メーカーが少なく、わが社がエンドエフェクターを作っても適切に扱えるSIerがなかなか見つからない。実績を積み重ね、ロボット研磨をはじめとした金属加工を得意とするSIer兼装置メーカーとして名を上げていきたい」と力を込める。
(ロボットダイジェスト編集部 斉藤拓哉)