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2021.03.01

[特集 物流機器は新世代へvol.6]物の流れを止めないためにマテハンで重要なこと/オークラ輸送機

オークラ輸送機(兵庫県加古川市、大庫良一社長)は、工場や倉庫などで物の運搬や保管を自動化するマテリアルハンドリング(マテハン)機器を扱う国内大手メーカーだ。近年は、パレット(荷役台)へ段ボールなどの荷物を積むパレタイズ作業や荷下ろしのデパレタイズ作業など、作業工程の要所に自社開発の産業用ロボットなどを使ったパッケージシステムの提案を増やしている。「ただ、最も重要なのは工程の間をつなぐ技術。そこがわが社の強みを最大限生かせる」と大庫大輔専務は話す。

コロナ禍で物流の重要度が増す

「今回のコロナ禍でマテハン機器へのニーズは高まった」と大庫大輔専務

 オークラ輸送機は、コンベヤーなどマテハン機器の標準品の製造や販売と、生産現場向けの個別システム構築、物流現場向けの個別システム構築の3つが事業の大きな柱だ。

 この5年ほど、個別案件では物流現場向けと食品業界の工場内物流の受注が多い。大庫専務は「今回の新型コロナウイルス禍で、さらに勢いを増した印象もある」と話す。
 コロナ禍で物流や、家庭向けの加工食品の需要は非常に高まった。一般的には、企業は景気の低迷期に設備投資を抑制する。しかし、それらの分野ではコロナ禍以前からあった計画が、中止にならずに進行したことからも、その勢いを実感する。

自社ロボットでパッケージ化

自社ロボットを使った「ロボットパレタイザ」。6軸ロボット(=左)は開発中

 その中で同社は、専用機やロボットなどを使ったパッケージシステムの提案レパートリーを増やしている。
 パレタイズの工程では、以前からあった専用機に加え、自社開発した垂直多関節ロボットを使った「ロボットパレタイザ」シリーズを展開する。幅広い種類の搬送物に対応できるのが特徴で、食品や飲料を中心に幅広い業種で導入実績がある。

 例えば、アルコール飲料の工場だ。アルコール飲料の工場では、ビールやサワーが入ったたるをロボットがパレットに積み下ろす。たるは形状や容量が商品ブランドごとに異なる。また、商品を充填(じゅうてん)して出荷する中身が入ったたるだけでなく、再利用のために飲食店や酒屋から返却された空だるも扱う。
 さまざまなたるに対応する必要があったため、顧客はロボットパレタイザの汎用性の高さを評価して導入を決めたという。

国際物流総合展2018でロボットパレタイザは注目を集めた

 ロボットパレタイザは現在、パレットに物を積み込む用途が多く、4軸の垂直多関節ロボットを使ったシステムが基本となる。ただ、同社は6軸のロボットの開発も進めている。
 「最近では物流倉庫内への入出荷にパレットだけでなく、柵状のかごが付いた台車を使う場面が増えた。カゴ台車に荷物を積み下ろす作業の自動化ニーズも高まる」(大庫専務)。
 かごにぶつからずに荷物を扱うには、より高い動作の自由度が必要で、関節の多いロボットが要る。2018年の「国際物流総合展2018」で参考出展し、多くの来場者から注目を集めた。

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