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2019.10.11

SIer2社が合弁会社を設立、相模原で生まれた新たな連携の形【後編】/トランセンド(JET、永進テクノ)

相模原市のロボットシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)、JET(相模原市中央区、遠藤法男社長)と永進テクノ(相模原市緑区、鈴木道雄社長)は、2016年に共同出資によるSIer、トランセンド(相模原市中央区、遠藤法男社長)を設立した。多品種の不定形物の仕分けや搬送に適した独自の画像処理システムを開発し、食品産業の開拓を狙う。

食品産業の自動化に注力

右から遠藤法男JET社長、鈴木道雄永進テクノ社長、大野慶トランセンドCTO

 トランセンドは、JETと永進テクノが共同出資して設立したSIerだ。
 ロボットのシステムインテグレーションの中でも特に、システムの全体像を決める構想設計を担う。技術的にはその他の工程も担えるが、JETと永進テクノの両社長の他は、大野慶最高技術責任者(CTO)と2人のエンジニア、2人の技術顧問がいるだけなので、その後の工程についてはJETや永進テクノに引き継ぐことが多い。

 トランセンドが注力するのが三品産業(食品、化粧品、医薬品)だ。特に食品工場の自動化に力を入れる。
 「食品産業は自動化が強く求められている分野だが、生産技術部門がなく、自社で自動化システムの構想を作ったり仕様を決めたりできない企業も少なくないので、提案のしがいがある」と大野CTOは話す。

特化型の画像解析ソフトを開発

開発した「食品工場のコンビニ向け配送仕分けロボット」

 前編でも触れた通り、トランセンド設立のきっかけになったのは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト」。

 このプロジェクトを通し、永進テクノとJETが協力して「食品工場のコンビニ向け配送仕分けロボット」を開発した。体に負荷がかかる冷蔵室の低温環境から、作業者を解放できる。

食品に適した画像解析ソフトを自社開発した

 同社の食品工場向けロボットシステムの最大の特徴が、独自のビジョンシステムだ。画像解析のソフトウエアを独自に開発し、市販のカメラと組み合わせた。

 「一般的に売られている画像解析ソフトは汎用性が高い代わりに高価。扱うものを限定すれば、安価で高性能なビジョンシステムは作れる」と大野CTOは言う。同社の場合は食品工場向けに、コンビニの弁当や総菜などの認識に特化した画像解析ソフトを開発した。
 数百種類の製品を認識でき、「ここまでの多品種対応ができるシステムは他にない」と大野CTOは自信を見せる。

 2017年11月末~12月に東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれた「2017国際ロボット展(iREX 2017)」にも出展。食品工場向けのシステムをアピールしたところ、好評だったという。既に受注が決まった大型案件もある。

食品物流を変えたい

同社が提案するロボット仕分けシステム

 トランセンドの今後の課題は、事業規模の拡大だ。
 「やみくもに拡大を求めることはしないが、最大で50人程度の規模になれば、複数の開発案件や大規模案件を進めることも可能で、できることが増える」と永進テクノの鈴木社長は言う。

 JETの遠藤社長は「食品物流に革命を起こし、業界のスタンダードを変えたい。社会のニーズと自社の技術シーズが合致しており、めったにない大きなチャンス」と展望を語る。

――終わり
(編集デスク 曽根勇也)



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