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2022.02.15

連載

[注目製品PickUp! vol.39]協働ロボの安全性確保/エクセル「CoboSafe」

ロボットダイジェスト編集部が注目したロボット関連の製品を紹介する「注目製品PickUp!」。今回は、エクセル(さいたま市中央区、富樫昌之社長)が扱うドイツGTEの協働ロボット向けの衝撃力測定システム「CoboSafe(コボセーフ)」を取り上げる。協働ロボットは安全性が高いとはいえ、潜在的なリスクはある。衝撃力測定システムは、リスクアセスメント(リスクの確認や評価、対処)に重要な装置だ。協働ロボットの存在感が増す日本の工場で、安全性確保に貢献する。

ISOの安全規格に準拠

 電子計測機器や放送機器の製造と輸入販売を手がけるエクセルは、GTE製の協働ロボット向けの衝撃力測定システム「コボセーフ」を扱う。

 協働ロボットは安全柵なしで使えるが、潜在的に人との衝突により衝撃を与えるリスクがある。そのためリスクアセスメントが必要で、コボセーフはリスクアセスメントのための衝撃力測定ができる。

「潜在需要は大きい」と技術部の小林稔課長

 リスクアセスメントのために、協働ロボットを設計するロボットメーカーはもちろん、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)、ロボットの最終顧客の保全部や生産技術部でも、異常や経年変化の把握など、安全な運用のために重要となる製品だ。「いかに協働ロボットとはいえ、当たれば痛いだけでは済まない。ロボットを導入しているあらゆる工場で、安全確保のために必要となる。その意味で潜在需要は大きい」と技術部の小林稔課長は話す。

 コボセーフは国際標準化機構(ISO)のTS15066や日本のTS B 0033などの安全規格に準拠する。衝撃力は人間の身体の部位ごとにバネ定数で決められているため、フォース(力)ゲージ「コボセーフ-CBSF」はそのバネ定数に合わせ9種類をそろえる。人とロボットの接触(過渡的接触)とロボットによる挟み込み(準静的接触)の測定結果を表示し、内蔵メモリーに370件の測定データを記録できる。

 協働ロボットの衝撃力は、ニュートン(N)で表される「力」と、N/㎠で表される「圧力」の2つがある。圧力測定には「コボセーフ-Scan(スキャン)」と時系列の圧力推移を計測できる「コボセーフ-Tek(テック)」の2種類があり、いずれかをオプションで選べる。
 また測定したデータは、解析ソフトウエア「コボセーフ-Vision(ビジョン)」で力と圧力のデータ解析とレポート作成ができる。

協働ロボットの衝撃力は圧力と力の2つがある

精力的にデモを

 1982年設立のエクセルの祖業は、安全規格関連の試験機に使う補助具(ジグ)の製造だった。やがて電子計測機器や検査装置などの製造を始め、関連機器の輸入販売にも手を広げた。特にラジオ向けの放送関係の機器をメインにビジネスを広げてきた。
 扱う商材の8割方が電子機器で、特に安全規格関連が多い。スポーツイベントなどに使う放送機器は、アナログからデジタルに変わることでデータ量が大きくなり、データを圧縮するための機器が必要になるなど、ニーズの変化に応えてきた。また製品の納入で終わりではなく、保守やメンテナンスなども担当してきた。

 エクセルがコボセーフを扱い始めたのは、回転自動ドア用の安全規格関連の機器を製造するGTEとの付き合いからだ。10年ほど前に日本でも回転自動ドアの事故が大きく取り上げられ、安全規格の必要性が高まった。GTE製品を扱うようになった数年後には、GTEがロボット用の安全規格関連の機器の製造にも乗り出し、日本市場での窓口としてエクセルに白羽の矢が立った。コボセーフは2016年にISOに準拠し、それを機に一気にロボットメーカーからの引き合いも増えた。

 日本市場では現在までに合計80台ほどを納入した。ロボットメーカーよりも、自動車メーカーなど保全部が充実した協働ロボットのユーザー企業の導入が早かったという。
 「無人搬送車(AGV)や自律走行搬送ロボット(AMR)の安全性確保にも使えるので、さらなる潜在需要も見込む」(小林課長)

① コボセーフの衝撃力測定システムの構成

 特に愛知県を中心に中部市場ではニーズが高い。新型コロナウイルス禍でも、一時ストップする案件は出ているものの、引き合いや相談自体は減っていないため、精力的に出向いて実機デモンストレーションをこなす構えだ。
 「潜在需要に対し、仕様としては高いレベルで満たしている」と小林課長は自信を見せるが、商社が売り歩くのは難しい商材との自覚もある。それでもSIerでもある商社の大喜産業(大阪市西区、森口博之社長)とは、共同体制を整えて拡販に当たる。

 協働ロボット向けの商材はエクセルにとり異分野。しかし、長くさまざまな安全規格に関わっているからこそ、協働ロボットの安全というニッチ分野についても、変わらず今までやってきたことの延長として取り組める。
 「需要が伸びる協働ロボットが日本の工場で存在感を高める。その工場の安全に貢献したい」と小林課長は力を込める。
                     (ロボットダイジェスト編集部 芳賀 崇)

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