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2021.06.14

モバイルバッテリーでもしっかり50kg保持/下西技研工業

産業機器や事務機器向けに機構部品や磁気製品、熱関連部品を設計、製造する下西技研工業(大阪府東大阪市、下西孝社長)は、産業用ロボットや物流業界の市場開拓を図る。昨年12月に発売した「スイッチングマグホルダー」は、小型で軽量ながら強い磁力で最大50kg程度の重量物も保持できる。モバイルバッテリーでも使用できるほど、ごくわずかな電力で保持できるため、これをロボットハンドの要素部品や、無人搬送車(AGV)の台車連結機構として提案する。

産ロボや物流業界で市場開拓

「新しい市場や顧客を開拓する機会になる」と話す下西哲史営業本部長

 下西技研工業が昨年12月に発売した「スイッチングマグホルダー」は、磁気を利用した保持具。直径50mm、厚さ20mm、重さ300g以下と小型で軽量ながら、磁気で保持できる物なら最大50kg程度の重量物まで保持できる。安全面での余裕を考慮しても、10~20kg程度なら安全に使用できる。

 軽量化が求められる産業用ロボットのロボットハンドや、AGVと台車の連結部、運搬用ドローンの荷物の保持具、金型や金属材料の搬送装置などに使える可能性がある。下西哲史営業本部長は「さまざまな使い方ができるため、業界を問わず潜在的な需要がある。初年度500個の販売を目指して、PRと販売に力を入れる」と意気込む。

わずかな電力で磁気をオンオフ

瞬間的な通電で吸着し、電力なしで保持する

 マグネット式の保持具には、大きく分けて永久磁石を使うタイプと、電気で保持する電磁石を使うタイプがある。
 永久磁石は突発的に磁気を失うことがないため安全だが、不意の吸着で運ぶ物を傷つける場合があり、外す時に別の電磁石を使うため扱いやすさに難がある。電磁石は磁気をオン/オフできるため扱いやすいが、保持する間は電力を消費し続け、停電すると磁気を失うため安全性に問題がある。

 「スイッチングマグホルダーは、従来は一長一短だったマグネット式保持具の常識を覆す」と下西本部長は胸を張る。2種類の永久磁石を組み合わせた構造で、吸着する時と外す時に瞬間的に通電するだけで磁気をオン/オフでき、電力を消費せず保持力を維持する。消費電力が極めて小さいため、24Vのモバイルバッテリーでも使え、充電の頻度も少なくて済む。固定の電源を使う場合も、停電時の落下リスクがない。仕様は現時点では単一だが、複数サイズのシリーズ化とスイッチングマグホルダーを使ったモジュール製品(最終製品に組み込みやすくしたユニット)の開発に取り組む。

直販でニーズ探る

「従来のマグネットホルダーのポテンシャルを超える製品と自負している」と下西本部長

 同社はもともと、機能性ヒンジ(蝶番)や磁気センサー、放熱・加熱部品などが主力製品で、特に多機能複写機の上部の紙送り機のヒンジに多く採用されている。
 下西本部長は「紙送り機は、重いもので15kgほどある。ヒンジには、それを持ち上げるアシスト機能や、途中で固定するフリーストップ機能などが求められ、外見からは見えにくいノウハウが詰まっている」と話す。

 従来の主力製品は搭載される機器の設計に合わせて細かくカスタマイズするため、直販での営業活動を展開してきた。「顧客のニーズを聞き取りやすく、直販のメリットは大きい」と下西本部長。
 スイッチングマグホルダーはカスタマイズを前提としない標準品として販売するが、「これから用途を見つけ市場を作っていく段階なので、顧客の声を多く集めるためにも直販を中心に拡販に努める」と話す。

(ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)

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