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2020.02.10

連載

[SIerを訪ねてvol.12]人材派遣業から生まれた異色のSIer【後編】/アウトソーシングテクノロジー

アウトソーシングテクノロジー(東京都千代田区、茂手木雅樹社長)は、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)事業を担う関西開発センターを立ち上げ、人材派遣に次ぐ経営の柱として確立すべく事業拡大に力を入れる。同社ではロボットを使った自動化システムに加え、より上位のシステムを含めた生産管理システム全体の開発も請け負う。工場を持たないファブレスSIerで、人材派遣で培った人材や技術力を活用し、独自路線を歩む。足元では食品工場や中小規模の各種加工会社からの引き合いが多く、受注に対応するため2021年には今の2倍超となる35人程度まで陣容を拡大する考えだ。そのためにも、今いる若手社員の育成に力を入れる。

人材派遣に次ぐ経営の柱を

 アウトソーシングテクノロジーのSIer事業を担う関西開発センターは、19年8月に17人でスタートしており、20年1月には5人増員し、今後も陣容拡大を図る。
 同社では毎年1000人規模の新卒採用をしており、現在関西開発センターに在籍する若手社員のうち15人は、その1000人の中から本人の希望に沿って配属された。新佳久センター長は「彼らが順調に仕事をこなせるようになれば、今後も社内で人材を確保しやすくなる」と成長に期待する。

 従来の人材派遣業では、エンジニアを顧客に派遣し、顧客の仕事をする。それに対し、関西開発センターで行っているのは業務の請負。人材派遣では個人のスキルが磨かれるが、顧客の要求以上の付加価値を提供することは難しい。請負では社内にも経験が蓄積され、自社の技術資産を増やすことで、顧客が持っていない技術やノウハウを提供できるようになる。1人のエンジニアを派遣すると1人分の売上にしかならないが、請負の場合、担当したのが5人であっても、顧客が10人分の価値があると思えばそれだけ大きな売り上げにつながる。

 同社では業務請負を人材派遣に次ぐ2本目の経営の柱と捉えている。単純な人材派遣よりも売り上げを底上げできる可能性があるのに加え、人材不足も方針転換の大きな要因だ。人材が商品となる派遣会社にとって人材不足は死活問題。高齢化と相まって自動化に対する顧客のニーズは高い。

小さな成功の積み重ねが大きな成功に

「熟練者頼みの判定など、ボトルネックになる部分から着手するのがいい」と話す新センター長

 高まる自動化ニーズに対し、同社はまずハーフオートメーション(半自動)の導入を提案する。新センター長は「誰もが『全自動』には引かれるが、まずは現実的な『半自動』から段階的に導入すると、失敗が少ない」と話す。

 画像検査をする工程に例えると、所定の位置に対象物を置いて全面を検査するには、途中で置きなおしが必要になる。ロボットでハンドリングしてカメラで全面を撮影し、人工知能(AI)で判定し、コンベヤーで次工程に流すのが全自動だとすれば、導入コストが高く、思うように運用できないリスクもある。
 そこで、最もボトルネックになっている工程を先に自動化するというのが新センター長の考え。この場合、まずは検査結果を判定するAIシステムを構築し、検査対象物のハンドリングは人が担う。判定がないため高度な技能は不要となり、誰でもできる作業になる。コア部分の自動化にめどが立ってから、ロボットや搬送システムの自動化に着手するという流れだ。

 新センター長が危惧するのは、自動化に失敗し投資をしなくなること。自動化できるかどうか分からないままロボットの導入に踏み切ってしまうと、かえってトラブルが増える場合もある。
 「ロボットの電源を切って人が作業をし、コンベヤーだけを使っているような現場も少なくない。なるべく小さな投資で実績を積み重ね、最終的に全体を自動化する方が、顧客も安心して投資を続けられる」と説く。

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