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2020.03.24

連載

[沖縄ウィークvol.2]「日本最南端のSIer」が見た沖縄市場のチャンス/カサイエレック

沖縄県の自動化ニーズの現況を1週間にわたり紹介する「沖縄ウィーク」。2日目は、沖縄県にビジネスチャンスを見いだし、17年に進出したシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のカサイエレック(愛知県大口町、葛西泉社長)を紹介する。県外から来るSIerが、沖縄県でビジネスをするうえで重要なことは何だろうか? 立花大資沖縄事業所長は「市場の特性を理解したうえで、いかに顧客と妥協点を探るかが重要」と話す。

社内で使う自動化システムから派生しSIerに

「強みは、ユーザー目線に立った自動化システムを製作できること」と語る葛西泉社長

 沖縄県にビジネスのチャンスを見いだしたカサイエレック。
 同社は自動車用スイッチメーカーのカサイ製作所(愛知県北名古屋市、葛西泉社長)のグループ会社で、2014年8月に設立された。
 電力会社向けの監視システムの設計、製造、販売がメインの事業で、通信機器や環境機器のシステム構築や無電極ランプの製造、販売も手掛ける。さらに、自動機やロボットを駆使した自動化システムを構築するSIerでもある。

 カサイ製作所も、社内で使う自動化システムの設計、製造から派生し、30年ほど前からSIer事業を展開する。葛西社長は「強みは、ユーザー目線に立った自動化システムの設計や製作ができること。自社工場のスイッチの量産現場でも自社製の自動化システムを使っているため、使う側の立場はよく分かっている。このため顧客からは高い信頼を得ている」と言う。

 「カサイ製作所が自動化システムの機械的な部分を作り込み、カサイエレックが設備の通信や電気回路系を担う。自動化システムを製作するうえで、一緒にやれるところは一緒やっている」と葛西社長は説明する。

  • 自社で設計し製作した自動化システム

  • 狭い空間で3台のスカラロボットが稼働する自動化システムも製作した

物流業の自動化需要に期待

「物流業の需要は期待できる」とカサイエレックの立花大資沖縄事業所長

 カサイエレックが沖縄県に進出したのは17年。沖縄本島の市の中で最南端に位置する糸満市に沖縄事業所を設けた。

 沖縄事業所では、無電極ランプの他、SIerの営業活動に注力する考えだ。現在は2人体制で沖縄市場の開拓に取り組む。
 カサイエレックの立花大資沖縄事業所長は、沖縄市場の自動化のポテンシャルを「製造業単体で見ればそれほど高くはない。しかし、物流業の需要は大いに期待できる」と見通す。
 「人口が約145万人の県に年間で1000万人を超える観光客が訪れるため、消費金額も非常に多い。沖縄県だけでは消費量に見合うだけの物品を製造できないので他県や海外から物を持ってくるしかなく、沖縄県の物流業の需要はどんどん高まるだろう。その中で自動化のニーズも出てくるのではないか」と話す。
 
 また、沖縄県で人手不足が徐々に深刻化しつつあることも、自動化ニーズの高まりに拍車をかけている。厚生労働省が20年1月31日に発表した2019年の沖縄県の平均有効求人倍率は前年から0.02ポイント増加し1.19倍となった。全国平均の1.60倍と比較すると低い水準だが、6年連続で過去最高値を更新した。

 立花所長は「沖縄では自動機やロボットを使った自動化システムを構築するにも、メンテナンスをするにも、県外からエンジニアを派遣しなければならず、非常にコストがかかる。そのため、沖縄県の製造業の企業はこれまで、自動化システムを導入せずに、人手で作業していた。しかし、最近は沖縄県でも人手不足が深刻で、人の採用が難しくなった。そのため、自動化の需要が高まっている」とニーズの変化を語る。

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