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2020.01.20

インタビュー

実績を重ね、普及拡大のフェーズに入った【後編】/MUJIN滝野一征CEO

2017年の「国際ロボット展(iREX)」にいきなり52小間の大ブースで出展し、大きな話題をさらったMUJIN(ムジン、東京都江東区、滝野一征最高経営責任者<CEO>)。「そこからの2年間で実績を重ね、製品のさらなるブラッシュアップも完了した」と滝野CEOは言う。昨年には75億円の資金調達も発表。「事業規模を拡大して普及させていくフェーズ(段階)に入った」と滝野CEOは話す。

ばら積みピッキングシステムをパッケージ化

「2019国際ロボット展」で発表したピックワーカー

――前編では、MUJINの特徴や物流向けの提案についてうかがいました。金属部品などの工場向けはいかがですか。
 金属部品の加工工場は物流センターと比べ、扱う製品の種類は少ないですが、部品の形状は多種多様です。箱なら印刷された模様やマークで種類を判別できますが、金属部品は形状でしか判断できません。しかし金属光沢があると形状の正確な把握はしにくく、工作機械への材料投入などでは動作の精密さも求められます。要求のハードルは高いのですが、金属加工は数十円の鉄の塊が1万円を超える部品になることもあるなど、付加価値が高い産業です。今後はこの分野にも一層注力しようと考えています。
 昨年12月に開かれた国際ロボット展では、ばら積みピッキングに必要な物をパッケージ化した「Pick Worker(ピックワーカー)」を披露しました。従来は現場ごとに設計、製造していたものを標準化することで、ロボット本体やハンド、3次元ビジョンセンサー、架台、柵など全て込みで1300万円からの低価格で提供できます。サイクルタイムは世界最速の5.5秒で、設置面積は従来比7割減。工場搬入から半日でシステムを立ち上げられます。

75億円の成長資金で事業拡大

国際ロボット展での集客力が、注目度の高さを物語る

――昨年は75億円の資金調達も発表されました。
 三井住友銀行からの融資で今後の成長基盤を構築するための資金を調達できました。
 ベンチャー企業では、資金を調達するタイミングが重要です。初期に多額の資金を調達をしても、5年後思っていた通りになっているわけがありません。創業当初にあるのは人と技術だけ。MUJINで言えば私と共同創業者で最高技術責任者(CTO)の出杏光魯仙(デアンコウ・ロセン)がいて、「モーションプランニングAI」という人工知能(AI)技術の一種があるのみです。そこから製品化を模索し、試験導入してくれる企業を探し、そこで見つかった課題を解決し、売り方や売り先の焦点も徐々にはっきりさせてようやく実績ができてくる。実績ができて具体的な顧客も見え、「後は規模を拡大するだけ」となった段階で成長資金を調達するのが重要で、まさにわが社はそのフェーズ(段階)になったわけです。この2年間は、研究開発のレベルではなく実際の現場作業で365日稼動させ、1万回に1回のトラブルもなくすなど、製品に細かな改良を加えてきました。今回の取材でお話しした、物流向けと金属加工向けいずれの提案も、全て現場での稼動実績があるシステムです。
 今後はこの成長資金を使って世界でビジネス展開する基盤を構築するとともに、優秀な技術者を多数確保し、ユーザー自らがカスタマイズできるシステムなどより競争力の高い製品開発も進めたいと考えています。

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