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2019.04.17

自動車部品メーカーが挑むAI事業/武蔵精密工業

武蔵精密工業は、ギアなどを製造する自動車部品メーカーだ。以前から生産技術部門に力を入れており、産業用ロボットを組み込んだ生産システムなどを自社工場に導入してきた。近年は人工知能(AI)とロボットを組み合わせた自動外観検査システムなども自社向けに開発した実績がある。その同社が、AI事業に参入すると発表した。顧客の要望に応じてAIやロボットを組み込んだ自動外観検査システムなどを提供し、今後はAIを活用した無人搬送車(AGV)なども開発する。「搬送や検査はAIやロボットに任せ、人は付加価値の源泉である加工などの工程に集中してもらえれば」と大塚浩史は話す。

イスラエルのAIベンチャーと合弁会社設立

「AI事業に参入する」と話す大塚浩史社長

 自動車用ギヤなどを製造する武蔵精密工業は4月3日、AI関連事業に参入すると発表した。同日から都内で開かれた展示会「第3回AI・人工知能エキスポ」の同社ブースで、大塚社長が概要を説明した。
 近日中にイスラエルのAIベンチャー企業シックスアイ・インタラクティブと合弁会社を設立し、愛知県豊橋市の武蔵精密工業本社内とイスラエルに研究拠点を設置する。合弁会社の社名はMusashi(ムサシ)AIで、出資比率は武蔵精密工業が51%、シックスアイが49%となる予定。

「製造業の課題解決に貢献」とラン・ポリアキン氏

 「AIベンチャー企業は無数にあるが、この分野は本当の最先端企業と組むことが重要。シックスアイはまさに最適なパートナー」と大塚社長は言う。
 シックスアイ創業者のラン・ポリアキン氏は「わが社は製造業での実績が豊富で、武蔵精密工業も製造業で高度なノウハウや技術がある。われわれのAIが製造現場の課題解決に貢献できれば」との述べた。

AIを組み込んだ外観検査システムなど提供

産業用ロボットとAIを組み合わせ、自動外観検査システムを構築

 武蔵精密工業は以前から社内設備として、AIや産業用ロボットを使った自動外観検査システムの構築などに取り組んできた。そのノウハウを生かし、顧客の要望に合わせた自動化システムを構築する。

 すでに日鉄精圧品(愛知県半田市、川上浩一郎社長)からの受注があり、AI機能を組み込んだ外観検査システムの納入に向けた実証試験を進めている。

AI用の演算装置をユニット化した「Neural Cube」

 また、AIに使われることが多い米国NVIDIA(エヌビディア)製の演算装置を組み込んだユニット「Neural Cube(ニューラルキューブ)」も開発。
 「演算装置は小さな半導体チップでしかないため、以前自社の生産システムに組み込む際に思いの外手間がかかった。そこでチップをユニット化したこの製品を開発した。ニューラルキューブがあれば手軽に生産システムにAI機能を組み込める」(大塚社長)。

2020年ごろ発売予定の屋外用AGVの試作品

 今後は、AIを組み込んだ外観検査装置や、屋内用と屋外用のAGV、無人フォークリフトなども開発する考えだ。

 AI関連の企業は増えているが、「当社のようなものづくりとAIの両方の技術やノウハウを持つ企業はあまりない。人手不足や働き方改革などはAIで解決すべき課題。検査や搬送などの工程はAIやロボットで自動化し、人は付加価値の源泉である加工などの工程に集中してもらえれば」と大塚社長は語る。

(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)


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