生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2023.09.11

インタビュー

独立を機に3つの目標/日本ロボットシステムインテグレータ協会 久保田和雄会長

――SIer協会の運営方針は?
 まず、独立以前から掲げていた「ネットワークの構築」「事業基盤の強化」「専門性の高度化」の3つが柱です。18年に正会員と協力会員合わせて144社で設立し、今は2倍以上の306社にまで拡大しました。入会を希望する企業はまだ多く、今年度中に350社を超えるかもしれません。さらに、「ロボットSIerを若者が憧れる職業へ」「SI業界の発展のみならず、自動化業界(ロボット業界)全体の発展のけん引者へ」「サイバーフィジカルシステムで、日本を世界一の自動化大国へ」の3つを新たな目標に定めました。

――3つの目標を実現するには。
 SIer業界に若く優秀な人材が集まることは、自動化の進歩と生産性の向上につながります。若者が憧れる職業になるためには、それだけの環境作りをしなければなりません。環境作りにもいろいろありますが、SIer協会としては、SIerに対する職業観を育てたい。全国各地で開催している「SIer’s Day」も、企業間のイベントにとどまらず、地域や学生を巻き込むような企画をしたいです。例えばロボットアイデア甲子園の参加者を増やして広めていけたらいいですね。また、自動化業界全体の発展は、SIer業界にも必然的に返ってきます。われわれSIerはロボットメーカーよりもユーザーに直結していますから、ユーザーの生の声を聞くことができます。現場の課題を知ることができれば、SIer協会として提案の方向性を示すことができるかもしれません。さらに、現実世界でのシステム製作に長けた日本が世界一の自動化大国になるには、人工知能(AI)や仮想現実(VR)をといったサイバー技術を積極的に取り入れることが必要です。開発段階で完成度を高めるフロントローディングを徹底できれば、システム製作にかかる負担を軽減できます。そのために、デジタル技術を利用したロボット操作の教育を提案していく予定です。

写真の右半分、モニターやティーチングペンダントが一体となったシステムが「デジタルトレーナー」。アルバイトの大学生がマニュアル作成を進めている

――ロボットのデジタル教育とは。
 私が社長を務める三明機工(静岡市清水区)が開発した「デジタルトレーナー」を活用できないかと考え、SIer協会の事務局に2台設置しています。従来ロボットの操作を学ぶには実機が必要でしたが、ロボットメーカーごとに操作方法が異なる上、学校などでロボットを多数設置するのは難しい。そこで、複数のロボットメーカーの動作を登録した3Dシミュ―レーターをパソコンに搭載し、実物のペンダント(ハンディー型の操作盤)やモニターなどとセットにしたのがデジタルトレーナーです。SIに関する知識や技能を測定する「SI検定」の検定機にも活用できればと考えています。実機を使う今のSI検定では、200Vの電源が必要だったり、大きさや重量のあるロボットシステムを遠方やビルの上階に運ばなければならないなど、いろいろな制約が付いてしまいますが、デジタルトレーナーは分解して宅配便で届けられます。今事務局では、アルバイトの大学生が、学生の視点で、学生にも分かりやすいマニュアル作成を進めてくれています。

――久保田会長の意気込みをお聞かせください。
 繰り返しになりますが、SIer業界の発展は日本の製造業の生産性向上に直結しており、SIer業界はこれからの日本のあり様を生み出す要となる産業です。若者に夢のある日本、夢のある未来を残せるかどうかは、今のわれわれの活動に委ねられていると言っても過言ではありません。日本を背負う責任ある業界であることを自覚し、新たな歩みを進めていきます。

(聞き手・ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)

久保田和雄(くぼた・かずお)
1975年3月武蔵工業大学工学部卒。三明機工社長。日本ロボット工業会副会長。2018年7月FA・ロボットシステムインテグレータ協会会長。23年6月に一般社団法人として組織変更された日本ロボットシステムインテグレータ協会の会長に就任。1952年、静岡県出身。

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