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2023.07.11

将来はOEM供給も、専用機メーカーが物流自動化に本腰/竜製作所

「製造」というアプローチ

竜製作所が取り扱うインビアロボティクスの自動搬送ロボット

 竜製作所は1953年創業の専用機メーカーで、自動車や半導体、液晶などの幅広い業界の顧客ニーズに合わせた専用機や自動機を設計、製作して技術力を磨いてきた。
 こうした事業基盤を持つ同社がなぜ、インビアロボティクスと資本業務提携を結んだのか?

 石田社長は「『ロボット市場への参入』や『物流市場への参入』ではなく、実は本業である『製造』というアプローチから資本業務提携に踏み切った。わが社のものづくりの技術力を生かし、将来的にはインビアロボティクスのロボットを自社で製造し、日本市場にOEM供給したい」と説明する。

 竜製作所は現在、会社の持続的な成長を目指して専用機ビジネス以外の事業領域の確立を模索している。その一つが専用機製造のノウハウを生かしたOEMで、当初は自動車や機械などの大手メーカー向けの受託生産をメインで手掛けた。
 だが、大手向けのOEM案件は競合も多く、事業の成長が思うように描けなかった。そこで同社は「世の中に最初に登場する製品なら競合がいないのでは――」と視点を変え、米国を中心とした国内外の製造業関連のスタートアップ企業に目を付けた。そのうちの一社がインビアロボティクスだった。

早い段階で第1号のユーザーを

竜製作所の石田恭一郎社長とインビアロボティクスの自動搬送ロボット

 米国カリフォルニア州に本社を構えるインビアロボティクスは2015年創業で、次世代の倉庫自動化ソリューションを提供するスタートアップ企業だ。創業間もない頃に開催されたある展示会がきっかけで、竜製作所との接点ができた。石田社長は「物流業界も製造業と同様に人手不足が深刻なため、搬送作業の自動化のニーズは大きいはず」と考え、約5年の準備期間を経てインビアロボティクスとの資本業務提携の締結につなげた。

 竜製作所が輸入販売を本格的に開始してからの約3年間で、ある物流関連企業と概念実証(PoC)を実施する段階にまでこぎ着けた。だが、現状ではまだ販売実績がないため、今後もショールームを活用しながら日本市場でのPRを続ける構えだ。
 石田社長は「日本市場には『実績』を重視する風土がある。だからこそ、なるべく早い段階で“日本第1号のユーザー”を獲得し、その後の拡販の追い風にしたい」と意気込む。輸入販売のビジネスを軌道に乗せて日本での実績を積み重ねてから、本来の狙いであるOEM生産にも乗り出す。海外製品を日本市場向けにOEM供給することで、手の届きやすい価格帯でのロボット導入を実現するのが今後の目標だという。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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