【特集】[集結! 自動化の最新提案vol.3]BCPが新たな価値に/MUJIN 滝野一征CEO
新型コロナで変わる意識
――そうした状況は一時的なもので、新型コロナウイルスのワクチンが開発されれば元に戻るのでは? 感染症を引き起こすのは、新型コロナウイルスだけではありません。季節性インフルエンザも毎年多数の死者を出しており、2018年には国内だけで3000人以上の方が亡くなりました。新型コロナウイルスによる国内の死亡者数が900人台(20年6月時点)であることを考えると、季節性インフルエンザも十分恐ろしい感染症と言えます。インフルエンザにはワクチンがあるものの、毎年型が変わるので接種しても万全とは言えません。季節性の他に、09年に流行した新型インフルエンザもあります。日本では流行しなかったものの、03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)や、05年以降広がった鳥インフルエンザ、12年に確認された中東呼吸器症候群(MERS)など、新たな感染症も次々に出てきます。
――たしかに数年ごとにさまざまな感染症が流行しました。 多くの企業はそうしたリスクをこれまでは直視せずに来ましたが、今回防疫に対する関心が高まったことで、社会全体の意識ががらっと変わりました。感染症流行時にも安定した事業運営ができる企業は、取引先にとっても、働く人にとっても魅力的。中長期的に見れば確実に自動化投資は拡大します。冒頭でFA向けの新規の引き合いは落ちていると話しましたが、コロナ禍が一段落し、経済の見通しが立てばこちらも間違いなく自動化投資が活発になるでしょう。日本では昔は水道水を飲むのが当たり前で、水を買うのは珍しいことでした。今のロボットも、そういう状況だと思います。しかし、今では多くの人が当たり前にミネラルウォーターを買うように、今後は工場にロボットを導入することも当たり前になると考えています。今回のコロナ禍をきっかけに、その流れが一気に加速したように感じます。
(聞き手・ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)
滝野一征(たきの・いっせい) アメリカ創価大学卒。イスカルジャパンを経て11年にカーネギーメロン大学の研究者だった出杏光魯仙(デアンコウ・ロセン)博士と共にMUJINを創業。大阪府出身の36歳。