[SIerを訪ねてvol.28]多品種少量の溶接現場にも、効果的な自動化を/三葉電熔社
効果的な導入のカギ
効果的なロボット導入につなげるためには、まず顧客の現場の解析が必要だ。そこで、コンサルティング企業の船井総合研究所(大阪市中央区、真貝大介社長)と連携して顧客への提案を進める。 まず、船井総研が、顧客の売り上げとそれに占めるワークの注文ごとのロット数、形状、製造原価などを評価する。その上で自動化の効果を上げやすい工程や、共通化できそうな事項をリストアップする。 次に三葉電熔社が、その候補でそれぞれのシステム構築にかかる予算や自動化の具体的な方法、投資費用を回収する目途まで算出して提案する。どの工程を自動化するかを決めたら、協力会社などとも連携して自動化システムを構築する。 また、多品種少量の溶接に対応させるため、高度な技術を使うシステムもある。そういった際には、ロボット導入やデジタル技術の活用を促す国や自治体の補助金を活用する。船井総研を通じて、各種補助金の申請支援をする。 尾崎社長は「溶接自動化でも、ジグ(補助具)の工夫で対処できるのもあれば、近接センサーが必要なもの、3Dビジョンセンサーの要るものまで技術レベルの差は大きい。現場に合わせて適切なシステムを提案できれば、顧客の経営環境が良くなり『ロボットっていいね』と思ってもらえる。そういう現場を1つでも増やすのも私の使命」と決意を語る。
大きさの違う鉄扉の溶接も共通項はある
実際に、制御盤用の鉄扉の製作では、共通の動きで工程の多くを自動化できた。 鉄扉は長方形で、1枚の板金の四辺に立ち壁を溶接する。さらに、立ち壁同士が接する面も溶接する。プラントや機械など制御盤の大きさに応じて扉の大きさが異なるため、一見すると、多品種少量のワークに思える。しかし、溶接する長さや立ち壁の高さが異なるだけ。長さや高さの違いを認識できれば、直線を溶接する動きを共通化できる。 この例では、さらに仕上げ工程にあたるグラインダーを使った研磨作業も併せて自動化した。2台のロボットを使い、1台が研磨と搬送を、もう1台が溶接を担当する。また、溶接しやすいようにワークの向きを変えるポジショナーも工夫し、幅広い大きさに対応できるようジグを内製した。 作業者は仮溶接をして立ち壁を簡単に接着した状態で投入し、ボタンを押すだけ。それでロボットが大きさなどを認識して適切に溶接と研磨をする。作業後は取り出し口から排出する。 尾崎社長は「投入して、ボタンを押すだけでシステム側が自動調整する。ロボットエンジニアのいない中小でも使いやすく、導入先の売り上げの多くを占める作業を自動化できた好例」と胸を張る。