• インタビュー
2021.02.03
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ロボ専用の「手持ち」機械工具で自動化提案を本格化【後編】/日東工器 石澤正光常務執行役員

「現場用工具」 と「工場用工具」

「“現場用工具”と“工場用工具”がある」と石澤正光常務執行役員

――今後の方針はいかがでしょう。  私は、社内に向けてよく言うのですが、「現場用工具」と「工場用工具」の2種類があると考えています。現場用工具は工場内だけでなく屋外や建設現場などでも使われる、充電式などの電動工具のような物を指します。一方、工場用工具は工場内の生産ラインや設備の保守で使われるような物。現場用工具を屋外や建設現場などで使う場合はどうしても人が作業する必要があり、自動化は難しいのですが、工場用工具は急速に自動化を求められる時代になったと思います。しかも、ロボットという人の代替手段もある。これらをうまく組み合わせて、スローガンである「技術で、人を想う。」を体現できればと考えています。 ――具体的にはどういった製品を開発していきますか。  まずは新製品3シリーズ中心に、既存製品をロボット用として増やします。ベルトサンダーのベルトンは、既存製品だけでもサイズなどの違いでレパートリーは豊富です。ロボットにベルトンを取り付けるだけでなく、ベルトサンダーを固定して研磨の対象物をロボットで把持して押し当てる方法もあります。また、今回は空気圧で駆動する機械工具をロボットに対応させました。本体に電動モーターを搭載しないので軽く、発熱しにくいなどのメリットもあります。一方、ロボット化した際には、電動の方が制御面では扱いやすいとの声もあり、さまざまなニーズや可能性を加味して、まずは既存製品をロボット用に再設計して事業を進めたいと思います。

手のひらサイズの「リニアコンプレッサー」(提供)

――その次には。  他にもロボット用に向きそうな製品が、まだまだあります。例えば、空気圧を増減させて圧縮空気や負圧を発生させる手のひらサイズの「リニアコンプレッサー」は活用のイメージがしやすいと思います。吸着式ロボットハンドの吸引力を生み出す機器などに応用できると考えています。一般に、吸着式ハンドはロボットと別に設置した大型なコンプレッサーから配管して圧縮空気や負圧を得ますが、小型のコンプレッサーならロボットに直接搭載でき、大掛かりな設備は不要です。 ――今回のコロナ禍の影響はありますか。  まず、工場用工具の自動化ニーズが一層高まりました。コロナ禍では人が出社できず、出社しても人と人が近接する作業ができません。機械工具を使う作業は、まだまだ人手が要るものが多いので、その代替手段を考えなければ生産が止まってしまいます。やはり、真っ先に考えるのは、その作業をそのままロボット化すること。その要望に、いち早く応えられればと思います。

同社のYouTubeチャンネルには、使用例を中心に多くの動画がある

――販売面ではいかがでしょう。  コロナ禍で対面営業の機会が減り、大きな影響がありました。昨年は、展示会の大半が中止や延期となりました。展示会は新規顧客と出会う機会であり、製品を知っていただく活動に腐心しました。一方、社内では動画を中心にしたデジタルマーケティングに3年前から注力していました。特にロボットが動作する状況を動画で見ることで、理解が一層深まります。今後もYouTube(ユーチューブ)の「Nitto Kohki JP Channel (日東工器JPチャンネル)」)などで動画の種類を増やし、活用したいと思います。また、自動化では営業部門からの提案営業も重要です。社員研修などの体制づくりも進めており、一層の体制強化を計りたいです。 ――今回発売した3製品は、どの程度の市場規模がありそうですか。  正直、現状では未知数です。顧客から個別で非常に強い自動化対応の要望をいただくことは多いのですが、「では全体は?」と聞かれると分からない部分の方が大きい。むしろ、ご教示いただきたいくらいです。ただ、今回の製品を発売したことで、手探りながらも市場規模が分かれば良いと考えています。機械工具を使う作業は、人手でないとできないと思っている人も少なくない。ですが、認知が広がることでそういう意識を変えられれば、さらに市場は広がる可能性もあるでしょう。また、ロボットシステムを構築するシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)各社に新製品を知っていただき、より協業し合える体制づくりも重要です。まずは第一弾の製品を発売できたことで、顧客ニーズが集まります。その声を分析して順次、製品化を進めたいと考えています。

(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)

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