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2019.04.22
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[注目製品PickUp!vol.12]2m四方のサイズも‼ カスタマイズ自在な真空グリッパー【前編】/シュマルツ「SPZ/SSP」

真空グリッパー初のカスタマイズ品

「カスタマイズして設置するサービスは業界初」とアーネ・ゲッテゲンス社長

 同社は昨年4月、カスタマイズ式真空グリッパー「SPZ/SSP」を発売し、カスタマイズから設置までを担うサービスを開始した。こうしたサービスは業界初(同社調べ)という。用途に応じた真空グリッパーを顧客ごとに作る点はSPZもSSPも同様。SPZはオプションを豊富にそろえたパッケージ製品で、SSPは部品を一つ一つ選択して真空グリッパーを構築する製品だ。

衝撃の少ない速度で大量に

約1.5m四方の吸着面

 SPZはパレタイズやデパレタイズなどの搬送作業や梱包作業向けで、ロボットとの接続部、吸着部、サポート機構の3カ所の仕様を選べる。吸着面は真空パッドかスポンジから選択でき、2m四方のサイズも可能だ。  ゲッテゲンス社長は、搬送対象物の保護の観点から、グリッパーは大きなサイズが良いと言う。「箱一つ一つを積み降ろしするシステムで効率を上げるには、搬送速度を上げるしかない。すると搬送物への衝撃やダメージも大きくなる。そこで一度に多くの物を吸着し、衝撃の少ない速度で搬送した方が良い」と提案する。

吸着以外の機構で用途を広げる

 SPZでは吸着機構にメカ式のサポート機構を組み合わせて、用途に合った最適なシステムを構築する。例えばサポート機構の一つであるフックは、パレタイズやデパレタイズで威力を発揮する。  パレタイズでは最初に、段ボールを載せるパレットを用意する。一般的な樹脂製のパレットは軽量化のため、格子状の骨格のみの構造で、真空搬送は難しい。フックがあれば、パレットを物理的に引っ掛けて持ち上げられ、搬送できる。パレットの準備から段ボール箱のパレタイズまで、グリッパーと付け替えずにSPZだけで作業できる。デパレタイズはその逆で、荷降ろし後にパレットを片付けられる。  また、特殊なシートで側面を覆い、メカ式のアームで押さえてから吸着するオプションもある。シート内を真空状態にすることで、大量の対象物を吸着しても荷崩れしにくいという。動画では、下面が段ボール、上面はラップやビニール材で覆われたビンやペットボトルのケースを、一度に複数持ち上げた。

3500点以上から選ぶオーダー品

自動車のドア部品の搬送(シュマルツ提供)

 もう一方のSSPはSPZ以上に選択の幅が広い。3500点以上の構成部品から選択して真空グリッパーを構成する。配管や電気配線に合わせて仕様を変えられ、グリッパーの基本形状や真空パッドの種類なども細かく選べる。そのため、幅広い対象物の搬送に使える。自動車のドアなど、特殊な形状の物も安定して搬送できる。金属やガラスはもちろんだが、半導体関連の薄いフィルムをシワなく吸着したり、繊細な対象物の一括搬送にも採用された実績がある。

薄い板金を1枚ずつ持ち上げる

「真空吸着の長年のノウハウと、世界各地の事例や知恵を結集」とゲッテゲンス社長

 最近の採用例では、板金加工の自動化が特徴的という。薄い板金が何枚も積み重なる状態で一番上の1枚を持ち上げると、下の板も離れずに持ち上がってしまう場合がある。そこで1枚だけを持ち上げるため、メインの吸引面とは別に補助の吸着装置を付け、片側から徐々に持ち上げることでこの課題を解消した。  見学者からは驚きの声が挙がるという。「この方法の実現には真空グリッパーの機能も必要だが、ロボット本体の動作も含めたシステム構築が重要。当社が持つ真空吸着の長年のノウハウと、世界各地の事例や知恵を結集したからこそできた」(ゲッテゲンス社長)。  この事例のようなロボットの動作も含めたエンジニアリングが、新たに目指すビジネスモデルだ。後編ではその意図を聞いた。

――後編に続く (ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)

関連記事:[注目製品PickUp!vol.12]2m四方のサイズも‼ カスタマイズの真空グリッパー【後編】/シュマルツ「SPZ/SSP」(4月23日アップ予定)

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