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2021.02.01

スピンドル発売でロボ切削に本腰/KEBAジャパン

オーストリアの産業機械向け制御機器メーカーの日本法人、KEBA(ケバ)ジャパン(東京都江東区、村上正和社長)が、切削ロボット市場の開拓に本腰を入れ始めた。ロボットアームの先端に搭載できる切削加工用のスピンドル「LeviSpin(レビスピン)」を国内で発売。加工後の寸法精度±0.01mmを目標に、切削加工の制御技術の研究を進めており、産業用ロボットを使った金属切削加工の精度向上をアピールする。

複合材に容易に穴開け

発売した「レビスピン」は回転部を自在に動かせる(=提供)

 KEBAジャパンが昨年11月に国内販売したレビスピンは、工作機械や産業用ロボットを使った切削加工向けのスピンドル。長さ492mm、最大直径175mmの大きさで、毎分1万2000回転の標準品と同1万8000回転のオプション品の2タイプを用意した。

 回転部を支える軸受けは、磁気式。回転部を非接触で支持しており、数μm単位で6方向に動かせる。回転軸を上下に振動させ、切削工具の加工対象物への食いつきと切りくずの排出性を高められる。

 また、スピンドル単体で回転軸を傾斜させられるため、穴開けと穴の縁にできる微小な凹凸を取る「バリ取り」などを一工程で可能にした。
 加工条件を細かく変更しやすいのも特徴。航空機部品によく使われる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)とチタンの複合材のように、複数の素材を重ねた異種接合材にも簡単に穴を開けられる。

Gコードをロボで使える

「ロボット切削は普及する」と村上正和社長

 KEBAは、産業用ロボットや射出成形機、工作機械の制御機器や制御パネル関連機器などを手掛ける。相手先ブランド生産(OEM)が大半で企業名が表に出ることは少ないが、世界の主要なロボットメーカーの製品にも同社の機器が使われている。
 制御機器メーカーがスピンドルを日本で発売した理由とは……? 村上社長は「KEBAの強みを発揮できる分野が、垂直多関節ロボットを使った切削加工だった。今後、本格普及する見込みのロボット切削分野を開拓したい」と明かす。

iREX2019で展示したロボット切削システム

 スピンドルを開発したのは、2018年にKEBAが買収したドイツのサーボモーターメーカーのLTIモーション。KEBAが長年培った産業用ロボットの動作制御の技術と、LTIモーションのスピンドル関連の技術を合わせることで、より高精度な加工を目指す。
 ロボットの要素部品メーカーとも共同研究を進めており、補正技術なども駆使して、現在は±0.3mm程度の切削加工時の寸法精度を±0.01mmまで高める目標を立てる。

 また、工作機械の動作制御に使うGコードを使えるロボット用の制御機器もあり、工作機械ユーザーは稼働プログラムをそのまま転用できる。19年12月に開かれた産業用ロボットの展示会「国際ロボット展(iREX2019)」で参考出展し、手応えを感じた。

「KEBAの強みで切削ロボットの分野を開拓したい」と村上正和社長

 村上社長は「特に航空・宇宙分野で積極的に提案したい。今回のコロナ禍で今は下火だが、航空機部品は巨大で少量生産のものが大半。そういった部品の切削加工でロボットの汎用性を生かせれば、生産効率を飛躍的に高められる」とアピールする。

(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)

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