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2026.04.16
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[特別企画 第5回高校生ロボットSIリーグに迫るvol.1]ひたむきさでつかんだ最優秀賞/蔵前工科高校

2026年12月12日と13日の2日間、愛知県で「第5回高校生ロボットシステムインテグレーション競技会(高校生ロボットSIリーグ)」が開催される。高校生が企業のサポートを受けながら約8カ月の期間でロボットシステムを組み上げ、会場でその完成度を競う大会だ。ロボットダイジェストでは「特別企画」として参加校やサポーター企業に取材し、第5回大会に迫る。vol.1では前回大会で最優秀賞に輝いた、蔵前工科高等学校にインタビューした。

水野敦志:ロボットダイジェスト編集記者

実はぎりぎりだった

高校生がロボットシステムを組み上げ、完成度を競う「高校生ロボットSIリーグ」

 高校生ロボットSIリーグでは、未来のロボット業界を担う高校生が、約8カ月の長い期間をかけて1つのロボットシステムを構築する。第一線で働くロボットシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)企業のサポートを受けながら、課題やテーマに沿った独自のシステムを組み上げ、会場でその完成度を競い合う。
 主催の日本ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会、会長・久保田和雄三明機工社長)と共催の愛知県は、同大会を通じてロボット人材の創出とSIerの認知度向上を図っており、参加した高校生からは「SIerについてあまり知らなかったが、大会への参加を通じて深く学べ、進路を考える上でも貴重な経験になった」との声もある。

 今年で第5回を迎える同大会は、2022年度から毎年開催されている。昨年の前回大会では過去最多の20校が参加し、競技部門とエキシビション部門に分かれてその成果を競った。競技部門で最優秀賞を勝ち取ったのは、東京都から参加した蔵前工科高校。チームの主要メンバーの3年生が卒業を控える今年3月に、大会を振り返っての感想を聞いた。


 

蔵前工科高校のチームリーダーの市村仁之介さん

 チームは3年生5人と、2年生3人の計8人。サポーター企業は興和オプトロニクス(名古屋市中区、三輪尚巨社長)が務めた。まずはチームを代表して、リーダーの市村仁之介さんに率直な感想を聞いた。

市村さん「最優秀賞を取れて、とてもうれしいです。高校生ロボットSIリーグには2年生の時にも参加し、その時は優秀賞だったので、それ以上の結果を残せて良かったです。システムの制御関連や配線などを主に担当しました。大会当日は他の参加校も高得点を出していて焦りましたが、チーム全体でぎりぎりまで調整したからこそ、他校を上回れたと思います」

ロボットシステム「みわける君」を構築

 競技課題は、ペットボトルと金属ボトルを識別し、キャップ外しや中身の取り出しをして仕分けるとの内容だった。SIerからしても簡単ではない作業だが、それに対して蔵前工科高校はロボットシステム「みわける君」を作り上げた。
 ファナック製の垂直多関節ロボットで、あらかじめ棚の所定の位置に置いたボトルをつかみ、仮置き台に置く。カメラを使ってボトルを判定し、キャップの取り外しレールなどを利用しながら仕分けを進める構成にした。

 このシステムが性能を十二分に発揮し、蔵前工科高校が最優秀賞に輝いたという。大会後には知り合いのSIerから「完璧なシステムだった」「高校生のレベルを超えている」との声も聞かれ、その出来栄えはプロも感心するほどだったようだ。なぜそれほどのシステムが作れたのか。きっと学校での指導に秘訣(ひけつ)があるに違いないと思い、蔵前工科高校の増田泰治先生に聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

大会当日、蔵前工科高校が競技に臨む様子

 増田先生「実は大会前日、現地で最終調整をしているとチョコ停(短時間の設備停止)が発生しました。生徒たちはなんとか解消しようと手を尽くしましたが、最後まで原因が究明できませんでした。当日はそうしたチョコ停が運よく発生せず、無事に競技を終えました。大会後に各所からお褒めの言葉をいただきましたが、本当のところはぎりぎりだったんです」
 まさか「完璧」と言われていた蔵前工科高校に、そんな裏話があったとは。そう驚いていると、サポーターとして同校に何度も足を運んだ興和オプトロニクス人事部の南川文孝教育研修課長からも「学校を訪問するたび、生徒たちは新たなアイデアを考え、実行していました。その姿勢をずっと見てきたので、懸命に最終調整をする様子も納得ですし、そんな彼らだからこそ最優秀賞を取れたんだと思います」との言葉がかけられた。こうしたチーム全員のひたむきさが、最優秀賞との結果をもたらしたのだろう。

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