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2022.12.05

キヤノンが画像処理ソフト発売でFAに挑む

キヤノンは、新たなビジネスモデルとしてFA(ファクトリーオートメーション=工場自動化)関連のソリューション提案を加速させている。今年9月、画像処理ソフトウエア「Vision Edition(ビジョンエディション)2」を発売。従来製品よりも処理能力を上げ、他社製のカメラにも対応した。新製品をきっかけに、画像や映像を軸に据えた「設備やロボットの目」の提案を強化する。

長年のノウハウ生かす

ネットワークカメラ(=左)でアナログメーターを読み取る

 キヤノンはFA業界向けのソリューション提案を強化している。これまで培ってきた光学、撮像、画像処理などの技術やノウハウを生産現場に生かす。今年9月には画像処理ソフトウエア「Vision Edition(ビジョンエディション)2」を発売した。

 ビジョンエディション2は画像処理ソフトの最新版。ネットワーク上につながったカメラを操作でき、撮影した画像を処理する。天井などに取り付けたネットワークカメラは、さまざまな方向にレンズを向けることができ、高倍率のズームやピントと露出の自動調節機能を備える。
 そのカメラで撮影した画像や映像から幅広い情報を認識して取得する。

精度も汎用性も大幅強化

 新製品では従来と比べて、画像認識の精度を向上させた。見本画像と対象画像を照らし合わせて比較するパターンマッチングの強化や、人工知能(AI)技術のディープラーニングの機能を追加した。
 従来から実現できていた、バーコードや二次元コード、アナログメーターなどの読み取りだけでなく、新製品では英数字も高精度に認識できる。

 また、グループ会社 のキヤノンITソリューションズ(東京都港区、金澤明社長)が提供するAI検査プラットフォーム(基盤)「Visual Insight Station(ビジュアル・インサイト・ステーション)」と連携できる。同基盤で提供するAI外観検査などの機能をビジョンエディション2で利用できる。

タブレット内蔵のカメラでも

タブレット内蔵のカメラにも対応する

 接続できるカメラの種類も広げた。自社やグループ会社でスウェーデンに本社を置くアクシスコミュニケーションズのネットワークカメラだけでなく、新製品から初めて、高速通信をできる「USB3Vision(ビジョン)」規格の他社製産業用カメラやUVC規格のウェブカメラなどにも対応した。
 さらに同社のミラーレスカメラ「EOS Rシリーズ」も使用できる。同機種で撮影した高精細な画像を使うことで、かご車で搬送されている10個以上の段ボール箱の側面に付いたバーコードなどを一度に全て認識できる。
 タブレット端末に内蔵されたカメラも使える。タブレット端末にビジョンエディション2をインストールすれば、撮像から認識や分析まで1台で完結する。

プログラムも簡単

プログラム作成画面

 外部機器との接続も強化した。IOコマンドやHTTPコマンドで産業用パソコンやプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)などの各種制御機器を通じて制御できる。例えば、ある数値がしきい値を超えたら、該当箇所の画像を撮像するなどの使い方ができる。
 動作プログラムの作成も簡単にできる。事前に頻出する動作や機能に必要な動作パターンが登録されており、ユーザーはそれらを選び、詳細を設定するだけ。それらをフローチャート上に並べていけば、複雑な認識作業もできる。

 同社のイメージソリューション事業本部IIS事業推進センターの長谷川文彦主席は「画像認識の精度も汎用性も大幅強化した。アナログメーターの数値の読み取りから、目視検査の代替にも使え、不良を自律的に発見できる。現場作業者の負担を大きく減らす」とアピールする。

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