生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2022.04.08

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#49] 人もロボットもおんなじ

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話? アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。

■たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
 マスター元気? いやあ、今週もほんと疲れたわ。

――今夜もご機嫌ですね。何かいい事ありました? デートでは……、なさそうですね。
 いやね、先週3回目のワクチンを打ったって言ったじゃない。急に熱が出るとか、調子が悪くなるとか散々脅されてたからさ。土曜は大人しくしてようと思って何も予定を入れなかったらさ、朝も昼も何もなくてぴんぴんしてるのさ。な~んだと拍子抜けしてねぇ。まん防も終わったんで、久しぶりに駅前まで買い物に出かけてこのカバン買っちゃったよ。久しく買い物なんてしてないからさぁ、うれしくなって調子に乗って奮発しちゃったんだよ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。えっと、今夜のおすすめは「野菜いろいろ! 春のバーニャカウダー」かぁ。いつもしゃれてるねぇ。そうそう、マスターさっきスマホいじってたじゃない。この前も言ったけど、なんだか隔世の感があるよねぇ、マスターがスマホだもん。携帯電話嫌いだったマスターが、ガラケーをすっ飛ばしてちゃんとスマホを使いこなしてるんだから。指で画面をなぞってる姿を見たら、買って1カ月の初心者にはとても見えないもんなぁ。使いこなすと言えば思い出すよ、岐南町の青木精工の案件を。あれこそまさに、マスターみたいだったもん。初めはおっかなびっくりだったけど、今じゃちゃんと使いこなして、台数もさらに増やしてるってんだから。習うより慣れろ、考えるよりやったもん勝ち! って感じだもんなぁ……………。



 県庁所在地の岐阜市の南にある岐南町は、 国道21号と22号、156号が交差する岐南インターチェンジがあり、県内最大の交通量を誇る。木曽川を挟んで南に隣接する愛知県との重要な玄関口で、各国道沿いに経済活動が活発だ。工業も発達して、一時は地方交付税の不交付団体になるなど、経済的にも比較的豊かな自治体なんだ。

 岐南町の青木精工もそんな会社の1つで、かつては愛知県の一宮市にある金属加工会社に勤めて腕を上げた木村雄一さんが独立し、近くの貸工場から移った先が岐阜県岐南町だった。

 愛知県の北部や、岐阜市や各務原市などの岐阜南部の取引先を何度も往復する内に、中間点で交通の便がいい岐南町に本社工場を構えたんだ。

 自動車はもちろん、航空機の部品にまで手堅く業容を拡大して、ひとつの産業に偏らず、好不況に影響されにくい安定的な経営基盤を築き上げてきた。

 金属部品の加工には、段取り変えとか、加工後の部品の取り出しとか、検査や検品、測定など、部品を削っている時間以外の、言わば「直接金に結び付かないムダな時間」が結構ある。その間は、何千万円もするマシニングセンタや旋盤、複合加工機を止める、スタンバイさせておくわけだから、こんなムダな時間はない。

 従業員の就業時間中はもちろん、時間外にもバリバリ部品を削らせて使い倒してやることこそが、金属加工会社の経営効率に直結すると言っていい。加工機がフル回転して切りくずを飛ばしている間は、実のところオペレーター自身は何もすることがない。

 加工機がフル回転する間は、異常がない限りは、人がやらなきゃならない事、人しかできない事をやるのが最も効率的で、加工プログラムを確認したり、工具の刃先を点検したり、新たな加工に向けてジグ(加工補助具)を組み立てたりするのが最も効率的なのだ。

 木村社長もそれが分かっていて、加工機の周辺でこなす作業はほとんどを産業用ロボットに任せてきた。加工前のワークと呼ばれる部品の取り付けや加工後の部品の取り出し、各加工機へのワークの運搬や加工後の部品の回収などのために、自動搬送装置(AGV)まで導入した。AGVを導入するために、工場の床面まで張り替えた。

 工場のフル稼働を目指し、自動化をとことん突き詰めた結果、加工機の稼働時間は1日あたり20時間近くに達した。残りの時間は、加工機の大幅な段取り変更や日々の点検作業などで、これ以上稼働時間を増やしようがないぐらいのレベルに達していた。

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