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2024.04.24

連載

[活躍するロボジョvol.27]生産技術は難しい。だからこそ、楽しい/シチズン時計 高橋怜奈さん

シチズン時計の製造革新課で初の女性社員である高橋怜奈さんは、主に産業用ロボットや自動化機器、光学機器とソフトウエアまでを組み合わせた生産システムの開発を担う。時計部品は小さく、精密さと生産性の両立を求められる作業が多い。高橋さんは「システムの開発案件は難しいものばかりです。だけど、難しいからこそ、楽しい。性格に合ってます」と笑顔を見せる。

リーダーとして量産導入まで

 昨春、高橋さんは初めてチームリーダーとなり、ロボットシステムを完成させた。実証試験を終え、同様のシステムを複数製作して、まもなく量産工程で実稼働を開始する。
 そのロボットシステムの名は「Alice(アリス)」。時計の組み立て工程で、組み立て前の段取り作業を担う。

 時計のムーブメント(駆動装置)の部品をビジョンシステムで認識して、スカラロボットがばら積みピッキングし、専用の固定具(ジグ)に精度良くはめ込む。1つのムーブメントを構成する部品一式を一つのジグにはめ込んで、組み立て工程に送る。

 ロボットを使って時計の組み立て作業の全てを自動化するのは、まだまだ難しい。
 ただ、部品が一つのジグにそろっているだけで、組み立てる作業者の負担は低減できる。その作業をロボット化することで、省人化と生産効率の向上を狙う。

数ミリのねじをばら積みピッキング

初めてチームリーダーを務めて開発した、ばら積みロボットシステム「Alice」

 Aliceで実際にピッキングする部品は多数あり、ムーブメントの種類によっては100点を超える場合もある。ビジョンシステムでそれぞれを認識して、ジグ上の適切な位置に置く。

 中には数mmのねじや、直径1mm以下の極細のピンを持つ部品などもある。それらを曲げたり傷付けたりしないように把持する。
 幅広い部品に対応するため、ロボットハンドには、メカ式グリッパーや吸着式パッドなど複数の把持機構を搭載した。

真剣な眼差しでロボットのティーチングペンダントを手にする

 「将来を見越すと、汎用的に使えるシステムの方が仕様変更の際に設定の調整で済むため応用しやすいです。新規開発の手間が省け、生産現場で使う際も便利になります。今回は複数の把持方式を1つのロボットハンドに搭載した分、把持位置の調整も必要だったので、難易度はさらに上がりましたけど」と高橋さんは苦労を明かす。

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