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2020.01.23

連載

[随想:ロボット現役40年、いまだ修行中vol.10]設備システムの 「安心・安全」を求めて【前編】/小平紀生

過去には日本ロボット学会の第16代会長(2013~14年)を務め、現在も日本ロボット工業会のシステムエンジニアリング部会長など、ロボット業界の要職を数多く務める三菱電機の小平紀生氏。黎明(れいめい)期から40年以上もロボット産業と共に歩んできた同氏に、自身の半生を振り返るとともに、ロボット産業について思うところをつづってもらった。毎月掲載、全12回の連載企画「随想:ロボット現役40年、いまだ修行中」の第10回。三菱電機の主管技師長として「社外からの依頼業務は全て引き受ける」と決め、2008年に日本機械工業連合会(日機連、現会長・大宮英明三菱重工業相談役)の機械安全の活動にも関わり始めた。

設備安全の検討部会に

2011年の安全に関する日機連講演会時の筆者(日機連提供)

 「社外からの依頼業務は全て引き受ける」という決心のもと、東京の本社へ異動してから思いもよらなかった新しい活動の場と人脈が次々と広がりました。前号で紹介した日本ロボット学会(現会長・浅田稔大阪大学教授)もその一つですが、今回は設備安全の世界に分け入った話になります。
 現在でもセーフティーグローバル推進機構(IGSAP、会長・向殿政男明治大学名誉教授)の理事を務めていますので、この分野ではまだ現役です。

 東京に来て2年目の2008年、日機連から日本ロボット工業会(現会長・橋本康彦川崎重工業取締役)に「安全に関する検討部会に委員を出してほしい」との打診があり、私に話が回ってきました。例によって引き受けたわけですが、実は機械安全や設備安全に関しては、社内の一通りの安全教育と、ロボットに関するざっとした知識だけ。「リスクアセスメント」も聞いたことがある程度のシロウトでした。

ゼロにはならないロボットに起因する労働災害死亡事故

 日機連の検討会は「機械安全を設備安全に展開するための課題と方策に関する検討部会」という名称。委員の皆さんは安全の専門家で、私だけが機械側のロボットの専門家でした。
 機械の安全はそれぞれ規格があっても、それらをつなげてシステムにした場合にどうやって安全を確保すべきか、それが部会の検討課題です。

 専門家の先生方の話を聞いておとなしく勉強させてもらおうと思っていたのですが、ロボットシステムは格好の事例として常に話題になりましたので、そうはいきませんでした。ロボットに起因する労働災害死亡事故がなかなかゼロ件にはならない現状にも危機感を覚えつつ、08年から10年までの3年間、随分鍛えられました。

 この検討部会では、システム全体の安全を確保する責任はどの範囲で誰が負うべきかが必ずしも明確にはされない従来の生産システム構築の実態を分析しました。

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