生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2018.11.03

連載

[気鋭のロボット研究者vol.3]高速化が人との協調を変える/東京大学山川雄司講師【後編】

ひもなどの柔軟物をロボットでいかに扱うか研究してきた山川雄司講師。高速な画像の取得・解析システムや動作制御技術を使い「じゃんけんロボット」も開発した。「その時の経験がもうひとつの研究テーマにつながった」と山川講師は言う。

後出しを協調作業に生かす

山川講師のもう一つの研究テーマが、人とロボットの協調作業だ。
「『勝率100%じゃんけんロボット』では高速な画像解析と制御技術を利用し、後出しを後出しと感じさせないよう動作させた。この原理を応用すれば、人とロボットの協調作業でも人の動きに合わせてロボットを動かせるようになる」(山川講師)。

例えば右の動画のようなシステムだ。

 板の片方の端を人が、もう一方をロボットが持つ。
 人が板を上げたり下げたりしても即座にロボットが反応し、水平を保ってくれる。板の上に水を入れたコップを載せたとしても、中身がこぼれることはない。

 ねじるように板を傾ける動きは「人が意図的にしている動作」と判断し、その動作には協力してくれる。

 人の動きを後追いするだけのシンプルなシステムだが、タイムラグが非常に小さいためまるで人とロボットが息を合わせて同時に作業しているかのように見える。

ロボットが人に合わせるべき

これらの技術は精密な作業にも応用できる。

 写真では、ロボット側の70μmの凹部に、人が持つ部品の50μmの凸部を差し込んだ。
 凹部と凸部の位置のずれはロボットが常に修正してくれるため、位置合わせを気にせず両部品を触れさせるだけで精密なはめ合いができる。

 落ちてくるボールをキャッチするシステムも可能だ。大まかな位置だけ人が合わせれば後は自動で微調整してくれる。

 「人とロボットが協調作業する場合、今は人が気を使ってロボットに合わせるが、本来は人の動きにロボットが合わせるべき。画像の取得や解析、動作制御が高速化ならばそれを実現できる」と山川講師は語る。 

——終わり
(ロボットダイジェスト編集部)

山川雄司(やまかわ・ゆうじ)
東京大学 生産技術研究所 機械・生体系部門 講師
2006年3月東京大学工学部卒。08年3月年同大学院情報理工学系研究科修士課程修了。11年3月同博士課程修了。11年4月同特任助教。14年4月同助教。17年10月より現職。休日は18年1月に生まれた子どもの世話に追われる栃木県出身の36歳。

※この記事は「月刊生産財マーケティング」2018年11月号に掲載した連載「今に花咲き実を結ぶ」を再編集したものです。

TOP