[特集2025国際ロボット展vol.5]周辺技術の進化を実機で証明
デモ機でエンコーダーの性能訴求/ハイデンハイン
ドイツのハイデンハインはiREX2025で、ロボットの高精度制御を実現するエンコーダーソリューションを全面的にアピールする。
エンコーダーはロボットの関節などに組み込むことで、軸の回転量などを検出し、動作の精密な制御に役立つ。
営業本部セールス&マーケティングの清水昇副本部長は「黒子的な立ち位置だが、ロボットには不可欠な要素部品。わが社のエンコーダーがロボットの性能向上や小型化に寄与できる点を示したい」と話す。
エンコーダーは通常、モーター側の入力軸にのみ取り付ける。だが減速機側の出力軸にセカンダリエンコーダーを取り付けると、バックラッシや弾性変形の影響を補正し、位置決め精度がより高まる「二重エンコーダー制御」を実現できる。
同社は近年、そのセカンダリエンコーダーの提案に力を入れる。セカンダリエンコーダーはロボットの関節部に追加するものだが、そこで同社は中空構造で省スペースなインダクティブエンコーダーや、1台で入力軸・出力軸の両方を検出可能なデュアルエンコーダーを開発した。
今回展の目玉製品の一つとなるデュアルエンコーダー「KCI 120 Dplus(ディープラス)」は、耐環境性に優れる走査方式を採用。軸受けを内蔵しない構造のため、省スペースかつ長寿命との特徴も持つ。協働ロボットに搭載すれば、2つの軸の差異を基に外部から受ける力を簡易的に検出でき、安全性を維持しつつ小型化を実現できる。
このようにメリットは多いものの、セカンダリエンコーダー自体の活用イメージがまだ浸透していないという。
「言葉としては一定の認知度を得たが、具体的な活用シーンをつかんでもらえるような提案が重要」と清水副本部長。
そこで今回展ではブースに、自社製協働ロボットのデモ機を初めて設置する。関節にセカンダリエンコーダーとして同社製品を組み込み、外力の検出や、高精度の位置決め補正をする様子を体感できるようにした。
ブースには他にもデモ機を置き、実際の動作を通じてエンコーダーの価値を直接的に訴求する。
「前回のiREXまでは製品展示が中心だった。だが今回はデモ機を複数置くことで、二重エンコーダー制御の効果や具体的な活用イメージを喚起できるようなブース構成を狙う」と清水副本部長は話す。
導入のハードルを下げる
協働ロボットへの採用拡大を狙う一方、市場の成長性を見込んでヒト型ロボットにも注目する。
ヒト型ロボットは人間に近い形状をしており、生産現場や物流倉庫の搬送作業、店舗での接客、家庭内でのコミュニケーションなど幅広い用途が期待される。災害現場をはじめ屋外の過酷な環境下での運用もその一つ。
「そのため防水や防じん性が求められる。また転倒の可能性がある点は産業用ロボットと大きく異なる。わが社のエンコーダーは耐環境性や耐久性に優れ、ヒト型ロボットが必要とする条件に合致するはず」と清水副本部長は見通す。
ヒト型ロボットは米国と中国が強力に開発を推し進めており、関連技術の進歩も目覚ましい。「ロボットの制御技術が発展し、あらゆる作業をロボットで担えるようになれば、市場が急激に拡大する可能性は高い。そうなると参入企業が増え競争も激化するが、そこでわが社の存在感を保てるよう、市場ニーズを捉えた製品開発を続けるのが重要」と語る。
同社の強みは工作機械市場で培った制御技術にあり、今後はそれをロボット市場にも応用する。
具体的には、セカンダリエンコーダーからのフィードバックに対応したドライブユニットや、制御系を含むソリューション提案を進め、ユーザーが二重エンコーダー制御を容易に導入できる環境を整える。
(西塚将喜、水野敦志)

