ロボットで野菜の収穫作業を自動化!/AGRIST 高辻克海CVO インタビュー(2/3)
稼働環境や作物の特性に合わせ工夫
AIによるピーマンの認識(アグリスト提供)
――ロボットにとって、ピーマンの収穫は難しい?
トマトやイチゴなどは、葉は緑で、収穫すべき実は赤い。色の違いで、収穫すべき実を判別できます。一方ピーマンは葉も実も緑で、色では判別できません。また実を付ける位置もばらばらです。そうなると形状と光沢くらいしか判別のポイントはありませんが、葉で隠れてしまうので実の全体は見えません。そこで、AIの一種である機械学習を使いました。
――AIで判別できるようにしたわけですね。
葉で一部が隠れたピーマンの画像をAIに学習させ、実の一部が見えていればピーマンだと認識できるようにしました。新富町がピーマン栽培が盛んなこともありますが、「ピーマン用が開発できれば、他の作物用も開発できる」というのも最初にピーマン用ロボットを開発した理由の一つです。
――農場はロボットの稼働環境としてはどうですか?
つり下げ式のため、地面の凹凸は問題になりませんでした。残る課題は、一日のうちで明るさや光源の方向が大きく変わることです。人工的な照明環境ではないので、この環境変化は工場などと比べても大きいと思います。これも、機械学習により解決できました。さまざまな方向からさまざまな強さの光が当たった画像を学習させました。
――ハンドも特殊ですね。
ハンドの開発にはとても苦労しました。ハンドは、小さなベルトコンベヤーを二つ並べたような構造です。実のすぐ上の茎を挟み、茎の上部を切断し、ベルト状の機構を使って手前側に引き寄せます。しかしそのままだとつかみ代の分、茎が長く残ってしまい、後工程で人が一つ一つ短く切るのは手間がかかります。そこで、引き寄せた後につかみ代を切り落とす二度切りの構造を開発しました。
――課題はありますか?
ロボットが自動で隣の列に移ることができないので、その機能を開発しているところです。複数列の作業を担えれば、より省人化になります。しかしこれが意外と難しい。直進と違って曲がらなければいけないので、ステアリング(操舵)の機構が必要になります。幸い解決方法は見えてきたので、今後この機能を実装していきます。
――他の野菜への対応は?
キュウリの収穫作業用のロボットも開発しています。キュウリはピーマンと同様に実も緑で、似ている部分もありますが、異なる部分もあります。例えば実がデリケートで重い。ピーマン用ロボットの場合、ロボット本体の底が開く構造になっていて、収穫したピーマンが本体内にある程度たまると、収穫ボックスの上まで行って、落下させてボックスに入れます。しかしキュウリではこれはできません。そこで、つり下げ式ではなく自走式にし、実を落下させずにボックスに入れる方式にしました。キュウリの畑はピーマン畑とは地面の状況が違い、自走式でも問題なく使用できます。
――他の野菜向けのロボットも開発しますか?
農家の方からの要望次第ですね。トマトなどは他社でも開発しているので、わが社が独自で開発する必要はないかもしれませんが、ナスなどは需要があるかもしれません。
――農業ロボットの今後の計画は?
ピーマンの収穫ロボットは、今年の9月に本格的な販売開始を予定しています。ロボットを使った栽培方法の効果を証明するため、今は地元農家や鹿児島県などとも連携し、実証実験を積み重ねているところです。また、自社でも栽培データを取って、公表していきます。