2025.12.03
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[特集2025国際ロボット展vol.13]ヒト型ロボット市場はいずれ自動車並みに

ヒト型ロボットへの注目が、かつてないほど高まっている。人手不足を解決する手段として、あるいは新たなサービスロボットとして期待され、多くの企業が開発に挑む。しかし、ヒト型ロボットのブームは過去にもあり、かつ実用化がそれほど進まなかったことから、近年の潮流に懐疑的な声も少なくない。今回もまた一時のブームに終わるのか、それともいよいよ実を結ぶのか。ここではヒト型ロボットの特徴や開発動向、今後の発展性をまとめる。

話題に事欠かない一年

写真はドイツNEURA ROBOTICS(ニウラロボティクス)のヒト型ロボット。6月にドイツで開催されたオートマティカ2025で発表した(画像リンク:同展リポート)

 2025年は、ヒト型ロボットに関するニュースを非常に多く目にした年だった。年が明けて間もなく、米国で世界最大規模のテクノロジー見本市「CES」が開幕した。米国の半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、基調講演で14台ものヒト型ロボットとともに登壇し、多くの注目を浴びた。

 以降も大手企業の参入や新たなモデルの登場、実証実験の開始など、話題に事欠かなかった。

5月に都内で開かれた「インターフェックスジャパン」に展示されたカワダロボティクス(東京都台東区、川田忠裕社長)の「NEXTAGE Fillie(ネクステージフィリー)」(画像リンク:同展リポート)

 ヒト型ロボットはヒューマノイドとも呼ばれるが、厳密な定義はない。多くの企業が「ヒト型ロボット」として開発する機体から共通点を抽出すると、「人間に近い形状をしており、自律的な状況判断で幅広い作業を担えるロボット」との傾向が強い。構造的な特徴としては、頭部と両腕を備える。頭部に搭載するカメラが人間の目に当たる役割を果たし、周囲の状況を認識した上で、両腕で実際の作業をする。

 移動方法は人間と同じく両足で二足歩行するタイプもあれば、搬送ロボットのように車輪で走行するタイプもある。重要なのは、人間と同じ環境で稼働し、同じ道具を扱え、柔軟に動作できるかどうか。そのためサイズや上半身の形状は人間と近い必要があるが、移動方法は用途に合わせて変わっても問題ない。

用途はいまだ不明確だが

山善が10月に千葉県の物流倉庫への試験導入したロボット(画像リンク:山善の試験導入の記事)

 多くの企業が参入し始めているが、その開発競争は米国と中国が主導する。代表的な企業は、米国ではエヌビディアの他に、テスラ、フィギュアAI、ボストンダイナミクスなど。中国ではアギボット、ユニツリー・ロボティクス、UBテック・ロボティクスなどがある。日本でも参入企業は増えつつあり、国産ヒト型ロボットの開発を目指すスタートアップのHighlanders(ハイランダーズ、東京都豊島区、増岡宏哉社長)などが注目を集める。

 世界的に開発が加速する背景には、まず人工知能(AI)技術が向上し、精密かつ柔軟な動作制御が現実味を帯びてきたことがある。そこに製造コストの低下などが合わさり、参入障壁が下がっている。ヒト型ロボット市場の成長率に関する予測を見ると、10年ほどで数倍には伸びるとの意見が多く、いずれ自動車並みの規模になるとの予測もある。

米国IMTSで展示された米国Apptronik(アプロトニック)のヒト型ロボット(画像リンク:同展リポート)

 ただ、ヒト型ロボット固有の特徴と合致する用途が、いまだ明確でないとの懸念はある。現状のスペックでは、製造現場や物流倉庫で人間の代替とするのに十分とは言い難い。またコミュニケーションを主目的としたタイプの開発も盛んだが、その場合は製品価格の低減が必須になる。ヒト型ロボットでしかなしえない作業が定まるか、性能が製造業などでの実需に追い付くかが、今後の命運を分けることになるだろう。

 2025国際ロボット展(iREX2025)では会期前の段階で、少なくとも10社以上がヒト型ロボットを出展することが明らかになっている。会場で数々の最新技術を目にすれば、ヒト型ロボットの現在地が分かるはずだ。

(ロボットダイジェスト編集部 水野敦志)

 

<次ページは三菱総合研究所の中村裕彦氏のインタビュー>

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