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2022.11.28

連載

[ロボットが活躍する現場 vol.22]難易度の高い自動化で得たノウハウと自信/シチズンマシナリー

小型の自動旋盤メーカーのシチズンマシナリー(長野県御代田町、中島圭一社長)は2018年から、積極的な自動化投資を進めている。工作機械を使った金属加工の前後工程で被削物(ワーク)を搬送する用途では、1990年代から産業用ロボットやガントリーローダーなどを使ってきた。この4年は難易度の高い組み立て作業や検査工程の自動化にも挑む。中島圭一社長は「社内の自動化で得た自信を、顧客にも還元したい」と話す。

4年で10台以上

シチズンマシナリーの工作機械の組み立て工程

 シチズンマシナリーは、時計大手のシチズン時計のグループ会社。工作機械の中でも円筒状のワークを切削加工する自動旋盤を中心とした製品ラインアップをそろえる。
 特に時計部品の加工で培った小型ワークの精密加工向けの機械を得意とし、国内の自動旋盤メーカーでは有数の規模を誇る。

 本社工場では、積極的な自動化投資を進めている。この4年間で10台以上の多関節ロボットを導入した。しかも、多くを組み立て作業や検査工程といった、自動化の難易度の高い作業に使っている。

重要部品のねじ締め

ガイドレールのねじ締めをする協働ロボット

 そのうちの1つが、ガイドレールのねじ締めだ。工作機械の稼働部によく使われるガイドレールの取り付けを協働ロボットで自動化した。
 ガイドレールは工作機械の肝の部品の1つで、同部品の取り付けの精度が、そのまま動作精度や機械加工の精度に反映される。従来はスキルのある作業者が担うような重要な工程だ。

 まず、ガイドレールを取り付ける鋳物部品とガイドレールを、補助具(ジグ)に固定した状態で、作業者がロボットの前に設置する。次にロボットが、搭載したビジョンセンサーでねじを締結する穴の位置を特定し、ねじ締めをする。
 ねじ締めの際には、ねじ穴に対して垂直に締めることが重要となる。曲がった状態で締め続けると、ねじ山が削れて破損する。ねじ山が壊れるとねじの締め付け力が不十分となり、ガイドレールのがたつきなどの要因となる。

 生産本部生産技術部生産技術1課の相川健吾課長は「人が作業する際には、ねじ穴にねじの先端を差し込んで垂直なのを確認してから、工具を使い本格的に締め始める。しかし、ロボットではねじを把持して姿勢を保った状態で穴までアプローチするのが難しく、人と同じ手順でねじを締められなかった」と苦労を明かす。

ねじ締め用の回転工具やねじを支えるグリッパーなどをエンドエフェクターに搭載

 そこで、手順を入れ替えた。
 先にロボット側のねじ締め工具の先端にねじ頭をはめ込み、グリッパーでねじ部を把持して固定する。垂直な状態を維持しながら、ねじをねじ穴近くまで移動させ、ロボットのグリッパーを緩めながら工具を回転させてねじを締める。
 その回転する力の大きさ(トルク)をセンサーで監視して、曲がった際や空振りで生じる異常値を検知した際には動作を止める。
 それらに必要な装置を1つのエンドエフェクターに集約した。

 一工程を終えるまでの時間は作業者よりもかかるものの、ロボットシステムは夜間も稼働できる仕様のため、全体の生産性はほぼ変わらない。
 作業者は段取り作業が中心で、付きっきりで近くにいる必要がない。実作業はロボットが担うので、経験の浅い人が担当しても、安定した作業品質を保てる。

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