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2021.12.03

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#34 ] 坊主も走る12月、ひと息つきたい

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話? アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。

■たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
 マスター元気? いやあ、今週も疲れたわ。

――おやおや、マフラーですか? 外は冷えてそうですね。
 まぁね、暦の上では来週は大雪だからね。12月に入ったし、そろそろこれぐらい冷えないとね。あ、そうそうマスター、ウチの会社のカレンダーいる? 店には無理だろうけど、良ければ自宅にでも張ってよ。手帳もあるよ。そういえば今日は、カレンダーの日らしいね。昔は先輩から「会社を訪ねたら、応接室に張ってあるカレンダーや灰皿の横に置かれたマッチを見て、どこと日ごろ取引しているかを調べてこい」なんて言われたものさ。帰りにそっとメモしたよ。今じゃ、カレンダーや手帳を配る会社もだんだん減ってきたよなぁ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。えっと、今夜のおすすめは「エビのアヒージョ」かぁ。いいねぇ。ニンニクは効いてるの? ニンニクと言えば思い出すよ。料理する時に実をバラバラにするのが、プラモデルの部品を枠から外すのを思い出すんだよ。飽きもせずに、戦闘機や戦車、スーパーカーのプラモデルなんかを、よく作ってたよなぁ……………。



 マスターは覚えてるかな? むかし、プラモデルを組み立てる時に「こりゃあ簡単だな」と、ろくに説明書も読まずに組み立て始めたら、途中で部品が足らなくなったり余ったり。中に組み込む部品が後から見つかって、一部を分解して組み立て直したりって。

 説明書の通りに決まった順番で組み立てれば最短で正しく組み上がるのに、読まずに我流で組み立てると、後に余計な時間や手間がかかってしまう。

 あるいは、塗装しようと初めから全部の部品をプラスチックの枠から切り取って外してしまうと、組み立てながら部品を探すのは大変だし、後工程で使う部品が目の前に散らばっていると、スペースばかり取って組み立てるには非効率だよね。
 
 逆に、作業の進み具合に応じて必要な部品が横から差し出されて、その都度組み立て方法や手順を教えてくれたら便利でしょ。

 今の最先端の工場では、どんな製品もそんな感じで作られているんだ。例えば、むかし機械を納めた造船会社にはドックと呼ばれる、船が1隻丸ごと入る大きさの組み立て場所がある。船があらかた完成したら、海に面したドアを開けて進水させて、船を操舵する船橋部分などはあらかじめ別に作っておいて、岸壁に係留してから船体に載せる。ドックは船1隻分の広さしかないから、手順や工程を間違えると、何日間も工期が遅れることになる。

 俺が昔扱っていた工作機械の最新の工場では、目の前で組み立てている機械の組み立て状況や作業の進み具合によって、台車やフォークリフトで次に使う部品や工具を配膳係が持ってきてくれる。2工程や3工程も後に使う部品じゃなく、今この瞬間に使う部品やユニットが、間違うことなく手元に正確に運ばれてくるんだ。

 つまりこれは、工場で作られている全ての製品や部品が今、どこまで作業が進んでいるのかを正確に把握できているから、こんな芸当ができる。正確に把握できていないと、前日に組み込んだ同じ部品が今日も運ばれて来たり、次に組み付けるユニットが届いてなかったりってことが起こるからね。

 作業の手を止めて、遠く離れた倉庫まで部品やユニットを探しに行って、慣れない倉庫から誤って別の部品を持って来たりしたら、他の人の作業にまで影響が広がってしまう。

 工場には配膳係という人がいて「A工場3番ラインの5番目にどの部品を」「B工場の1番ラインの8番目にこのユニットを」など、正確に届ける仕事をしている。簡単な作業に聞こえるけど、これが結構大事な役割なんだよ。部品やユニットによっては何万円、何十万円もする高価なものや、取り扱いが難しい、気を使わなきゃいけない物なんかも結構あるんだ。

 今じゃ、工場全体がモノのインターネット(IoT)でつながり、全ての部品やユニットがタグで管理されていて、さらに人工知能(AI)まで使ったシステムで管理されているから、どこの誰がいつ、どの工程で何を組みつけた、いつその工程を終えたか、なんかが全てきっちり管理されている。最新の工場では、ロボットアームが付いた無人搬送車(AGV)や無人運転のフォークリフトが、倉庫から部品やユニットを取り出し、自動で正確に必要な場所に届けてくれるんだ。

 組み立てを担当する作業員にしてみたら、難しい作業を終えて「ふうー、ようやく終わった」と、ひと息つく間もなく、次に使う部品が既に目の前に運ばれている。作業員の立場で考えれば、管理がゆるかった昔を知ってる世代からするとちょっと酷なような気もするけどね。

――最近じゃ、人手不足の居酒屋やファミリーレストランなんかでも、料理をテーブルに運び、空いた皿やジョッキ、コップなどを洗い場に下げるロボットが活躍するみたいですね。店員は料理を作ったり、客を案内するなどの仕事に集中できるから重宝がられているみたいですよ。疲れ知らずで文句も言わないって。ウチの店にロボットを入れたら、一体誰がたにがわさんの話を聞くんですかね。まさかロボットと言う訳には………。

■この連載はフィクションです。実在する人物や企業とは一切関係ありません。

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