生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2020.10.09

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#2]押してもダメなら引いてみる

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話。アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。


たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
 マスター元気? いやあ、今週も疲れたわ。おお、スマホ(スマートフォン)に着信だ。

――おや、険しい顔して。カノジョにメールで振られたんですか?
 違うよ、会社から。ラインだのスラックだのと連絡手段ばかり増えてさ。老眼で、画面が大きい機種に変えても、そもそもアプリの文字が小さいから読めなくてさ。ただでさえカタカナ語が多いのに「バ」なのか「パ」なのか、「ボ」か「ポ」か判読できなくてまいっちゃうよ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。今夜のおすすめは「タコとアボカドのワサビバジル」って、カタカナだらけだな。それちょうだい。スマホと言えばそろそろiPhone(アイフォーン)の新型が出るんだって? スマホと言えば思い出すよ。スマホが世に出る前、ガラケーなんて言われる前の携帯電話を自動で組み立てる案件を。あれは2006年とか05年ごろだっけなぁ。まだ商社にいたころ、設備の担当者からよく愚痴を聞かされた。検索サイトの「Google」を、当時の部長は「ゴーグル」って言ってたっけなぁ……………。

 当時はまだ、多くの日本の家電メーカーが携帯電話の端末を作っていて、中国の工場で人海戦術で組み立てていた。電子機器の受託製造サービス(EMS)はまだ、携帯電話みたいな精密機器は任せてもらえなかった。ある家電メーカーが中国での生産を前に、国内の工場で自動組み立てできるかどうかをテストしていた。シンクタンクから「中国でも人件費上昇の兆し」なんてリポートが届き、メーカーは血相を変えて自動組み立てに挑戦してたんだよ。

 筐(きょう)体、つまり携帯電話のボディーに、ユニット化した部品を乗せるところまではうまくいく。でも、それをねじ止めするところでつまずいた。家電メーカーは、日本のロボットメーカー各社に極秘で開発を依頼したが、なかなか成果が挙げられなかった。欧州のメーカーに頼んでもダメで、SIerらを交えてもにっちもさっちもいかなかった。

 当時は今みたいに、アプリのコンテンツを充実させるのではなく、携帯電話の本体をどんどん小さくするのが進化だった。新型が出る度に薄くて軽くなり「女性の手のひらに収まる」ってのが宣伝文句。最後は「どうやってボタンを押したらいいんだ?」ってぐらい小さくなって、指先で弾くようにしてボタンを押すぐらいにまで小型化が進んだ。

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