生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2020.10.02

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#1] 最後の午餐

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話。アブナイ話もしょせんは酔っ払いの戯れ言。悪しからず。


たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
マスター元気? いやあ、今週も疲れたわ。

――今日はスーツなんですね?
 昨日から全社で衣替えだってよ。ほら、ウチの会社は体質が古いからさ。10月とはいえまだ暑いのに、まいっちゃうよ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。

 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。え~っと、今夜のおすすめは「キノコとベーコンの温かいサラダ」か、秋だねぇ。秋と言えば思い出すよ。キノコの佃煮が評判だったメーカーの案件を。10年前、いや20年前だっけなぁ、今の会社に転職する前、商社勤務の時代だった。イチローが日本人野手で初めてメジャーリーグで契約した年だから2000年か。煮豆の製造ラインを自動化するって案件だったなぁ……………。

 名古屋市郊外の3代続く佃煮屋で、就任したての若社長が「ロボットを導入して生産効率を上げ、販路も拡大する。食品メーカーになるんだ!」って息巻いてさ。ホントは先代の経営との差別化を社内外に示すのが目的だったんだけどねぇ。

 煮上がった豆を、小さなトレーに定量で盛り付けてパック詰めにする計画でさ。それまではパートの女性がはかりで測り、次の工程で別のパートがパックに詰めて封印してた。ベテランのパートなら鍋からおたまですくった時点で数グラムの誤差で、1粒か2粒調整したら定量に収まるんだよ。一連の作業を自動化して、自動で測り終えた煮豆をロボットがトレーに移し、パックに詰めて封印するまでを任せるんだと。

 自動ラインを設計し、そこにロボット2台を導入したわけ。昼夜2交代の生産から、無人化して24時間フル稼働するのが目的だった。当然受けたさ、俺自身の勉強のためにも。

 納品前の検収作業は朝からで、ラインとロボットを始動したら仕様書通りに稼働した。ひと目見ようと集まった従業員やパートを前に若社長は鼻高々で、目が潤み出したのが横にいて分かるぐらいだった。

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