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2020.01.28

「未来の工場」や世界の先端事例を日本へ/ABBジャパン

スイスに本社のある世界大手のロボットメーカー、ABBの日本法人であるABBジャパン(東京都品川区、アクセル・クーア社長)は、自社グループで取り組んだ世界の先進事例を日本に積極的に提案する。昨年末に開かれた「2019国際ロボット展(iREX2019)」でも特色ある提案で注目を集めた。デジタルツイン技術とロボットを組み合わせた「未来の工場」や、ロボットによる複合樹脂素材の積層造形などを展示した。

日本での「化学反応」に期待

「日本の顧客に化学反応を起こしたい」と中島秀一郎事業本部長

 iREX2019全体を振り返ると、工場などの現場にそのまま導入でき、すぐに使えるような提案が多かった。そんな中で存在感を発揮したのが、ABBだ。展示するシステムの1つ1つが、先進的なものばかり。現在ある自動化ニーズのボリュームゾーンから考えるとニッチかもしれないが、難しい作業を自動化して来場者の注目を集めた。
 ABBジャパンの中島秀一郎ロボティクス&ディスクリート・オートメーション事業本部長は「世界の先端事例を日本で積極的に紹介することで、日本の顧客に新たな着想を得てもらい、化学反応を起こしたい」と、展示の狙いを話す。

大量生産も小ロットも1つのラインで

デジタルシミュレーションの様子

 iREX2019で小間の中心に据えたのは、腕時計の組み立て工程と箱詰め工程を一連にした生産ラインだ。製造品目が変わっても柔軟に変化に対応する「未来の工場」を表現した。

 まず水平多関節(スカラ)ロボットで、腕時計の時計部分とベルトを搬送容器から取り出し、搬送装置で双腕型協働ロボットYuMi(ユーミィ)まで運ぶ。ユーミィは2本のアームや固定器具を駆使して腕時計にベルトを取り付ける。次に別のユーミィが箱を組み立て、腕時計を納める。

 この生産ラインを、シミュレーション技術を生かしたデジタル空間上にも再現した。デジタル空間でも時計を組み立てて、現実と仮想を同期させながら生産管理ができる。

 展示では、1種類の時計を組み立て続けることで「大量生産」を表現する一方、腕時計のベルトは複数のデザインを用意。生産管理システムを通じて、来場者が好みのベルトを使った腕時計を発注すると、そのオーダー品の組み立てを始め、「少量多品種生産」への対応を示した。
 担当者は、「デジタルシミュレーション上での管理により、1つの生産ラインで大量生産品と小ロットの特注品のどちらにも、速やかに対応できる」と訴求する。

ロボットは完璧ではない

「robot digest」の特注の腕時計ができるまで

 実際にロボットダイジェスト編集部も腕時計を作成してもらった。

 まず好きなベルトを選択し必要事項を入力すると、しばらくして生産管理画面に「robot digest」とのアイコンが出た。シミュレーションと照らし合わせると、発注した時計が今どこでどんな工程にあるかが分かる。一連の工程を経て箱詰めまでを終えると、レーザープリントで箱にrobot digestと記名する。そして、完成品はユーミィから作業者、作業者から記者へと手渡しされる。

 展示では、ロボットと作業者の協働も見どころだった。上記のような受け渡しだけでなく、ユーミィが腕時計や箱の組み立てを上手にできない際に、作業者が手助けをする。
 「ロボットも完璧ではなく、ミスをする。その時にだけ作業者がフォローすればよい。必ずしも『完璧なロボットシステム』を構築する必要はないと訴えたい」(担当者)。

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