大手ロボットメーカー幹部が未来を語る【後編】/RTJ2022「スペシャルセッション」
人材を育て生かす
神谷孝二氏 2030年の工場の姿をイメージすると、まず作るものが変わっているでしょう。そして現在のサプライチェーンの混乱を経て柔軟に対応しつつ、セキュアー(安全)に対応するため仮想技術の活用が定着するのではないでしょうか。完全無人化ではなく人とロボットが共存する工場になっていると思います。 そのためには、人とロボットの関わり方がもっと進化する必要があります。今の協働ロボットは本当に安全に使えるのかというと、そうではありません。安心、安全に使えるレベルに高めるためには、リスクを見える化する必要があります。それには仮想空間を活用してリスクアセスメント(リスクの確認や対処)をしたり、現場で仮想現実(VR)技術を使って見える化できると、もっと安心できるロボットになっているでしょう。 こうしたイメージを実現するには、ロボット関連の技術者の育成が重要です。愛知県や国と一緒に取り組んでいるプロジェクトがあるので、幅広い教育機関と連携して人材育成に力を入れます。
中島秀一郎氏 2030年の工場をイメージするうえで、労働人口の低下は大きな課題です。一方で、労働市場の流動性がかなり高まっており、30歳でも50歳でも転職は可能な時代です。 会社の競争力は、どれだけやりがいのある職場を持っているかが大きいのですが、ロボットを使った自動化は、本質的に大いにやりがいのある仕事だと思います。それを伝えていくことが、日本の製造業の競争力向上につながるのではないでしょうか。 海外メーカーから見ると、日本はロボットを販売する市場としても重要ですし、ロボットの部品を調達する国としても重要です。ロボットメーカーが多くあることも関係しているかもしれませんが、優秀なロボット部品メーカーがこれだけ密集する国はそうはありません。 わが社も部品の調達先、協業先を増やすことで、日本のロボット業界に貢献していきたいと考えています。 ――人材育成は非常に重要なテーマです。大星室長から何か補足はありますか。 大星光弘氏 高等専門学校(高専)や工業高校との取り組みもありますが、若手だけでなく40、50代でも初歩から学べる仕組みを考えています。今は各所にヒアリングをしているところで、方法論を含め検討中です。 ――登壇者の皆さまありがとうございました。また、予定時間を超えながらも来場された多くの方に最後までご参加いただき、ありがとうございました。今後の仕事のヒントになる何かを持ち帰っていただけたら幸いです。
――終わり (ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)
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