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2022.11.10
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[SIerを訪ねてvol.28]多品種少量の溶接現場にも、効果的な自動化を/三葉電熔社

自社もまさに変革中

「中小こそ、完全でなく効果的な自動化を」と尾崎洋社長

 元々は溶接に使う溶材を卸売する商社だった。そこから溶接機器やロボットも扱うようになる。特に自動車やバイクのマフラー関連を手掛ける企業が得意先だった。  しかし、10年ほど前から「自動車の変革期」と世間で叫ばれるようになった。その転換を見据えて、同社も次の事業の柱を模索する。海外展開なども仕掛けたが、軌道には乗らず撤退した痛い経験もある。  模索する中で導入するユーザー側の目線を知りたいなどの理由から、3年ほど前に船井総研が開く「中小製造業向けのロボット導入セミナー」に参加した。  船井総研の「費用対効果を考え、効果的なロボット導入をすべし」との提言が尾崎社長に響き、実はサプライヤー側と明かすと、船井総研と意気投合した。  そこからは連携して中小の溶接事業者向けのSIer事業にも注力し始めた。ウェブサイト「多品種少量溶接.com」などを開設し、両社で効果的な自動化を提案する。

新時代の商社目指す

 今は初心者にも扱いやすいロボットシステムのパッケージ化も進めている。その1つが2021年12月に発売した「協働ロボットTIG溶接パッケージ」だ。台湾のテックマンロボットの協働ロボット「TM5-700」を中心に溶接電源や溶接トーチ、溶材を送給する装置などを組み合わせた。  ロボットに動作を教示する際には、直接ロボットを動かすダイレクトティーチングにも対応するなど、初心者でも扱いやすい。

「SPN」の紹介画像

 また、ハードだけでなくソフトウエアでも中小企業を支援する。その1つが稼働監視システム「SPN」だ。  工作機械や板金加工機、産業用ロボットなどに接続して稼働状況をリアルタイムに記録する。クラウドサーバー上で管理するため、離れた拠点や社外からも稼働状況を閲覧できる。専用の基盤を開発したことで、IO端子やCCLINK、LANなど幅広い接続規格に対応した。機械やロボットのメーカー、製造時期を問わずに接続できる。  船井総研などとも連携して、各種機械の稼働状況の分析や工程の改善提案などのサービスにもつなげていく。  開発のきっかけは、溶材商社の働き方に疑問を持ったことだ。尾崎社長は09年に入社。当時は、顧客先を御用聞きのように回り、顧客の在庫状況に合わせて溶材を置いていくようなスタイルだった。  しかし、「定期的に訪問して溶材の在庫量を伺うのは21世紀の働き方じゃない」と考えていた。そこで、現場での溶接ロボットの稼働状況が分かると、溶材の使用量を推定できると気付いた。すると、在庫量や発注のタイミングも分かる。  テストユーザーでの使用が始まったばかりだが、来年中には自動発注システムとしても本格活用を目指す。尾崎社長は「溶接現場も自社も、自動化できるところは積極的にして、人が付加価値を生み出せるよう変革していきたい」と意気込む。

(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)

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