[SIerを訪ねてvol.8]ウォータージェットで事業拡大!今後は脱ファブレスへ【前編】/ROSECC
水道水の何百倍もの高圧水を噴射
WJシステムの場合、単にロボットの動きを知っているだけではシステムを顧客に提供できない。WJならではの注意点が多数あるという。 WJシステムではロボットの先端に、物をつかむためのハンドではなく高圧水を勢いよく噴射するためのノズルを取り付ける。また、ポンプや水管も別途必要だ。 WJの水圧は最高で約420MPa(メガパスカル)にも上る。一般家庭の水道水の水圧が約0.5MPaなので、材料の切断時には水道水の何百倍も高い圧力で水を勢いよく噴射する。そのため、騒音の対策が欠かせない。また、切断する材料によっては粉じんが水しぶきと一緒に舞う恐れもあり、粉じん対策が求められるケースもある。ノズルから噴射した水をどう回収し、排水するかも考慮しなければならない。 そのため、WJシステムにはロボットだけではなく騒音対策用のカバーや給排水装置なども含めた、トータルでの構想設計が求められる。そのうえで、サイクルタイム(一つの工程を終えるのにかかる時間)や切断精度などの要望に合わせて、ロボットのティーチングや、水圧や水量の制御をする必要がある。ロセックは、こうしたノウハウを30年以上にわたり培ってきた。
一方、ハンドリングシステムでは最適なロボットの選定やティーチングに加え、ロボットハンドの設計もロセックが担う。 前述の山田製作所に納めたロボットシステムでも、ハンドの設計を重視したという。 山田製作所は円筒形状の部品の研削加工(研削砥石<といし>を使って部品を高精度に加工すること)を手掛ける中小企業。2台のロボットシステムを17年と18年にそれぞれ導入し、加工機に部品を投入する工程と、加工後の部品を加工機から取り出す工程を自動化した。 「ハンドが加工機に干渉(ぶつかること)しないよう、物をつかむ部分である爪やハンド全体の形状にこだわった」と矢本社長は振り返る。「最適なハンドを設計するには、やはりロボットの動きをよく知っていなければならない」とも述べる。
従業員数を16人から50人に
ここまでは会社概要をはじめ、得意分野のWJシステムを中心にロセックが手掛けるロボットシステムの概要や設計時の注意点などを紹介した。 後編は、ロセックの今後の展望やそれに対する具体的な取り組みを解説する。 矢本社長は「今から4年後の23年度までに、従業員数を現状の16人から50人まで増やす」との高い目標を掲げる。ロボットシステムの製造に携わる人員を採用し、ファブレスからの脱却を目指すという。その狙いはどこにあるのだろうか――?
――後編へつづく (ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)
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